LOVE JUNK

Vol.10 近くて遠いアンニョンハセヨ〜

友人ふたりと5月に予定していたソウル旅行が、延びに延びてやっと実現した。格安ツアーにサービスとして必ずついている「途中、免税店、キムチの店に立ち寄ります」を避けるため、初めて個人旅行に挑戦してみた。個人旅行といってもなんてことはない、飛行機とホテルを別々に予約しただけである。ともに代理店があるし違いといったら、リコンファームを忘れちゃならないだけのことだった。「なに! 個人旅行? こりゃ楽しくなるよー」と意気込んでいたので、ちょっと拍子抜けした。

わたしの活動拠点地である新宿には海外からの観光客が多い。「なんで日本に来て新宿なの? 日本と言ったら京都でしょ?」と、いつも疑問に思っていたが、ソウルはそんな感じの街だ。観光地ではなく人が生活をするための都市、そんな印象を受けた。

さてさて、今回の旅の目的は、「韓国人女性の美肌追求」、「蒙古斑の謎に迫る」そして「韓国料理」。いや、その前に忘れちゃならないのが「板門店ツアー」だった。友人に「わたしたちは行かない」とあっさり断られ、ひとり寂しくツアーに参加することとなった。ご存知、「板門店」とは、北と南の軍事分解線上に存在する軍事停戦会議場のこと。映画「JSA」の舞台である。ソウル市内にいるときはまったく感じなかったけど、ここに来てはじめてこの国が休戦中とはいえ、「戦争中なのだ」と感じる。途中、国連軍のパスポートチェック、ところどころに設置されている道路を閉鎖するための爆薬ゲート、「事が起きて身が危険にさらされても了承します」という文書へのサイン。ね、緊張感漂うでしょ?

もちろんソウル市内でも戦争の影響はある。例えば、ソウルには横断歩道が非常に少ない。だから交通量の多い車道を横断するには、いたるところにある地下道にもぐって道を渡らなくてはならない。これが十字路だったりすると、いざ地上にあがったら目的の道とは違う道に出ちゃったりして、自分の方向音痴を恨みながらいまのぼった階段を再びおりることになる。エスカレーターなんてほとんどない。地下鉄にもエスカレーターは少なくて、バリアフリーにはほど遠い。お年寄りや体の不自由な人はさぞかし大変だろうと思うが、戦争中なので軍事費優先で福祉にまでまわらないそうなのだ。

この話、実は板門店ツアーのバスの中で隣の席だった方の受け売りだ。氏は相当の韓国フリークで、日本で韓国語を学び、歴史、文化、音楽、映画、テレビにいたるまで韓国のことならおまかせといった感じ。「韓国人に蒙古斑はない」という事実も教えてもらい、わたしはご機嫌だった。韓国人と日本人、顔はよく似ているがルーツが違うということだ。「韓国人の美肌はここに理由がある」とわたしはずっとにらんでいたのだ。最初は、韓国人ガイドの説明を「フンフン」頷きながら熱心に聞いていたのだが、そのうち氏の話の方が面白くなり、ガイドの話はそっちのけ。他のツアー参加者から見たら専門分野を熱く語る大学教授と赤点で補習を受けるゼミ学生と言ったところか? なんせガイドの話を聞いてないのでふたりで違うバスに乗り込んじゃったり、集合時間が曖昧だったりとすっかりハタ迷惑なツーリストと化していた。わたしの団体行動下手は今にはじまったことではないけれど、出発前「今回は場所が場所なんだから、和を乱すことなくちゃんと行動するのよ」と方々から言われ、「わかってる、大丈夫」と自信満々で臨んだはずなのに……。

さて、韓国人の美肌に少しでも近づこうと、汗蒸幕(ハンジュンマク)を訪れた。教えてもらったのは完全観光客向けの店だった。だって、店の前に「外国人専門店」って書いてあったもん。「韓国を味わう」ということからは外れるが、日本語が通じるのはラクチンだ。というのもソウルでは、会話に苦労しっぱなしだったからだ。簡単な英語でもほとんど通じない。友人は、頑張って韓国語を使っていたけど、わたしは全くダメ。カタカナの羅列にしか聞こえてこない。それでも帰る日にやっと「カムサハムニダ〜」(ありがとう)がなんとか言えるようになった。「『サムハカムニダ〜』あれ、なんかちがうな?」、「『カムサムハムニダ〜』って、こんなに『ム』が入ったっけ??」といった具合だ。話をもとに戻そう。その汗蒸幕店は「安価で良心的な店だということは確認済みだったので、「まあ、いいか」と店内に入った。最初は、「もうお金もないし、冷え性解消のヨモギ蒸しだけで」と思っていたのだが、相手はかなりの商売上手。気がついたら「うぶ毛抜き」までオーダーしていた。すべてのコースが終りサウナ・ニンジン風呂にも入り、身体まで拭いてもらったわたしは、空腹も手伝ってボーとしていた。そこにタイミングよく「絞りたてのジュースはいかが?」ときたもんだから、ついつい「じゃあ、りんごジュース」と言ってしまった。頼んでから700円もすることに気がつき、「びょぇ〜、700円でカード使えるかなぁ…? 夕飯代足りるかなぁ?」と、かなり焦った。たしかにりんごジュースは美味しかったけどね。

海外に行くとたいがい吹出物が出るわたしが、今回はつるつる、すべすべで帰国。もしかしたら初めてのことかもしれない。キムチがいいのか、汗蒸幕か、700円のりんごジュースのタマモノか? 帰国後も毎日せっせと、大量に買ってきたキムチを食べているが、やっぱりお肌の調子はいい。しばらくはキムチパワー全開中、周りの人には迷惑全開中? この場を借りてお詫び申し上げます。
ウォ〜

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