LOVE JUNK

Vol.14 前略、気象予報士さま

毎年毎年、やれ猛暑だ、やれ冷夏だと、その異常気象っぷりが話題になる。なのに、テレビのお天気キャスターのお姉さんは、それはそれは嬉しそうに「今日も暑かったですねー」と、満面の笑みで言うのはなぜ? 「視聴者を不安にさせない」という配慮なのか? っていうか、もう少し危機感をあおったほうがいいんじゃないの? などと考えていたら、ふとあることを思い出した。

当時のわたしは大学生だった。「経営学部」という文字ヅラは賢そうだが、その実何も考えていないアタマを一生懸命つかって、「コメの輸入自由化」についてお勉強していた。案の定、今では、GATTだとか標準価格米がどうのこうのとか、辛うじて単語が浮かんでくるくらいで、その内容はほとんど忘れてしまった(先生、ゴメンナサイ)。アタマの隅っこに薄っすらと残っている記憶をたどってみると、要はこんな感じだったはず。

93年、コメの輸入原則禁止をしていた日本に対して、アメリカさまは猛烈な圧力をかけてきた。
「コメノ ユニュウ  ヲ ジユウニ サセナサーイ」
と言ってこられたのだ。そしてタイミングよく、その年の日本は冷夏にみまわれ、コメ不足という窮地に陥り、結局、コメを輸入せざるを得ない羽目になったのである。思えば、初めて長いお米「タイ米」を食べたのは、この年であった。

自由化闘争そのものはここでは関係ないので省略するが、それにしても、あまりにもタイミングがよすぎた。そんなに都合よく冷夏になるかなー?? そしてわたしはヒラメイタ!
「この年の冷夏、アメリカが日本の気象操作をしたに違いない!」と。

こんな話をしたら「被害妄想」と言われそうだけど、でも考えてみてよ。アメリカといったら、世界一の軍事国家ですよ。神風から砂嵐まで、お天気は戦争のときに大きな影響を及ぼすわけでしょ? アメリカが気象操作の研究をしていないわけがない。

アメリカ、国立大学の気象学博士、ウェザー博士は、ある日アメリカ政府から、「世界の天気を操作できないものか?」と相談を受ける。
「キミも知ってのとおり、世界には日照りや洪水で農作物が育たず、飢餓で苦しんでいる人が大勢いる。いつも犠牲になるのは小さな子ども達だ。彼等を救うことができるのは、アメリカだけだ。そして、ウェザー博士、キミの協力が必要なんだ」と。
このとき彼は知らなかった、この研究が実は、軍事目的で行われているということを……。
政府のはなしを真に受け、すっかり感銘を受けたウェザー博士は、寝る間も惜しんで研究に没頭し、ついに遠隔操作可能の気象自由自在人工衛星「ファイン」を完成させる。
そして運命の年、アメリカ政府は気象操作の最初の実験場所に日本を選んだのだ。
「上手くいけばコメの輸入自由化も夢ではない」と。
このとき初めて、政府の陰謀を知った博士は、失意のまま姿を消したのであった……。

そんな風に考えた当時のわたしは、かなり興奮した。
「あたし、すごい発見しちゃったかも!!」
近いうちに日本の学者が同じことをテレビで言い出すに決まっている。そしたら日本はちょっとした騒ぎになって、――もちろん米国は「そんな事実はない」と否定するだろうけど(何といっても軍事機密だからね)――そうしたら、わたしは、クールに「そんなこと、とっくに気がついていたわ、フッ」と、鼻高々に自慢しちゃうもんねー。
と、ワクワクしていた。

しかし、待てど暮らせどそんなことを言い出す学者はおらず、そのうちにそんなお馬鹿な想像をしたことすら忘れてしまっていた。

今でも、有り得なくもないと思っている。いまだに、竜巻やら洪水やら干ばつやらが耐えないのは、気象自由自在人工衛星「ファイン」は、未完成だったのだ。しかし、博士が姿をくらましてしまったため、その後の研究が思うように進んでいないのだと考えればね。

あーあ、若かりし頃のあたしにひとこと伝えるのであれば、「せっかくのヒラメキはもっと有意義に使いましょう。」とでも言っておこう。

オー、ナイスウェザー、ファインファイン!"

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