どうしておまえは生まれてきたのか。こんなに苦しい世界を見に。
俺に会うために? <そうなの、どうしてもあなたに会いたくて。あなたを困らせたくて。>
だれかに復讐するために? <もうその相手はいない。二人だけ。>
大海原の居心地はどうだい? 笑ってくらせるかい?
悲しみも、苦しみも、痛みも花柳界の女がひきうけてくれる。
おまえはピンクの管を突き刺して、チントンシャンでも聞きながら天使の来るのを待つがいい。
魚屋の番頭は今日も上機嫌で女、子供を張り倒す。
カツオの血合いにかぶりつき、二級酒だけを流し込む。
だらしない口元、冷えた眼差し、グローブの様な手、そんな男がお好みかい?
家族旅行に行くつもり? それにはあのドブ川をこえてゲロとくそだめ受け入れろ。
デパートでお人形さんにでもなるつもりかい? おまえが着るのはつぎはぎだらけのおさがりさ。
牛肉、豚肉、どっちが好きだい? おまえが食うのは、ネコ肉入りのハムソーセージだ。
幸せかい? 生きていて。楽しいかい? 泣いていて。
1967年産のワインで乾杯だ! とびきり上等のきつねうどんもつけてやる。
あそこに帰れるのはおまえだけ。悪夢に寝汗で俺のパジャマはグチョグチョ。
声が聞こえるかい? あの男の。体温を感じるかい? 毛穴から浮き立つアルコールの気体。
夜中の単線でぼくらは帰るよ。悪魔たちの大きな口から逃げ出して。
おまえもちゃんと付いてきているかい。ここは山奥だからね。離れたら迷子になるよ。
駅には明かりなんかついてない。光っているのはたぬきの目玉。そいつも明日にはメインのおかずさ。
妹よ。君の名前はなに? いくつ? こんなとこでもいっしょにいたいかい?
妹よ。おまえは色白? それとも色黒?
妹よ。おまえはきれいな服を着て、化粧をするのかい?
妹よ。おまえは鼻の通った唇の薄い男と結婚するのかい?
妹よ。妹よ。本当に君は妹かい?