8月 十代のエロスと放課後の軌跡

古ぼけたアパート。共同の玄関、炊事場、トイレ。
暗闇に続くほこりがしみこんだ長い廊下。
からっぽのやかんからアンモニアの臭い。

こわれかけた玄関の戸を無理矢理こじ開けて、タイムトラベラーの恐怖を感じてすべりこむ。
エレベーターのワイヤーが切れた。
垂直に落下する時間。けつめどが、ぱっくりと開き、うずき、もだえながらアパートごと落下する。
足もとにはたくさんのへびが顔をだし隙間から舌をだす。
これでいい。この先はパラダイス。
崩れかけた壁に、楽園の戸をおびきだす。
水気をふくんだ戸をいつものようになれた手つきで左に引く、俺のアイ・ラブ・ユー。
きみの臭いがするこの部屋のすべてがおれの脳髄を刺激して笑顔から歓喜のうずへとすがたをかえる。
俺の両腕は獣のうろこ。

机には、ぼくが買ったジュースの空きビン。中にはきらきらひかるセルロイド。
中学時代のソフトボール部の写真が行儀よく置かれ、日焼けした顔がきらきら輝く。きみは、恥ずかしそうに写真を横にむけ隠そうとする。

初めての女の部屋。部屋中のすべてを吸収しながら、心の中の右手がピストンしながら、”あーっと”、無言のあーのまま、かわいた口が部屋中の空気を二酸化炭素に変えながら

今ここでするか、あーいいな、これが女の部屋か、いいにおいだ、たまらねーよ、しびれるぜ、こわれそうだ、でもまだ外見は羊だろ。
部屋中がピンク色に輝いている。汚い柱も、窓枠も気にならない。

ポリエステルの絨毯に腰をおろして、少し緊張したかたい唇にキスをする。いつもの唾液のにおいを確かめ、上唇から細胞をからませ、潤った感触と暖まったくちびるの間から
舌を入れくちの中をかきまわす、君の下半身はにわかに騒ぎだし、
君はいつものように、右の太股と左の太股をこすりあわせながら快感をあじわい、あふれでる白波とうちよせる快楽の波をせとぎわでおさえている。
はじめはわからなかったよ。キスだけでこんなにも濡れていたなんて。
純情なのか、淫乱なのか。どっちでもいい。どっちも大歓迎さ。うれしいよ。なんだかわからないけどうれしいよ。
紅葉した君の顔を見つめながら、太股のダンスをいたずらに愉しむキスをする。
スカートの上から、股の間に指をすべりこませ、指先に下着の感触が感じられる強さで、なでつける。
君は一瞬、くちびるをはなし、キスをやめ、熱い吐息をぼくにはなつ。
制服のうえからやさしく乳房をおおい、外側からゆっくりとこわしながら、もむことをあじわいながら、化合していくぼくの唾液と君の唾液を愉しみながら、アパートの廊下をだれかが歩いてこないことを祈りながら。
不器用にセーラー服を脱がせ横のホックをはずす。なんて数んだろう。
再びぼくは、セーラー服をたくし上げ、ブラウスのボタンをあせりながらゆっくりとはずす。中から生肌と真っ白いブラジャーが、あの肌の色とブラジャーの白が、緊張した肌に、毛穴にうぶげ。
せり上がったブラジャーがくしゃくしゃとよろめき、かたく、かたくそそり立つ乳房の存在の大波に身体が熱くうちふるえ手のひらですべてをつつみこむ。

きみはすべてをぼくにくれるというけれど、不安な気持ちをぬぐえないでいる

ぼくと一つになりたいと、そう望んでいるけれど、何かがブレーキをかけ勇気がでない

ぼくへのきみの愛が重すぎて、ロマンティックをあじわえないでいる

きみの家族はぼくに何をのぞむ きみとの生活 将来のプラン

バイバイするとき、きみのおかあさんがチョコレートの詰め合わせをぼくにわたし、                    すえながくおねがいします

っていうけど、それってなんだ どういう意味なんだよ そんな笑顔で わらうか


こわいよ こわくなっつたよ 時間が地面のすきまになだれこんだよ


きみがよこたわって よこにいるぼくを見つめるながら まえのおとうさんに乳房をなぶられた話を 告白する


きみがよこたわっている ペニスを入れようと膝をつかんでいる ぼくを見つめる顔が 苦労だらけの疲れ果てた きみのおかあさんに見えたんだ


やばいよ やばすぎるよ なんだかわからないけどやばいんだ すべてがやばすぎるよ


むりだよ むりにきまっているだろ いっしょに愛を経験したいんだ それからさ

むりだよ むりにきまっているだろ 愛がきえちゃったよ ためいきといっしょに



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