大谷 えーそれでは、第三回ライブ演劇論を始めたいと思います。今回のテーマはズバリ「エロチシズム」ですがどういう取っ掛かりで話していきましょうか? 今までは始めに和田さんが少しテーマについて話して、それであーでもないこーでもないと言っていたのですが、今回はそういうことなのでみなさんに本能のままに話していただきたいと思うのですが。
和田 そうなんだ、「え?」って思う人がいるかもしれないけど、夜の樹の芝居の、いちばん深い所に根を張ってるのが、「エロチシズム」の問題だと思うんだ。そこで、オレたち自身がこの問題を日頃どういうふうに考えているのか、ぶっちゃけて話して、今回はそれだけにして、続編として、バタイユの三部作「呪われた部分」「エロチシズムの歴史」「至高性」と中沢新一のここ二、三年の「カイエソバージュ」の仕事なんかを、オレが例の勝手読みで紹介しながら、みんながそれをどう思うか、どう受け取るかのライブ「続エロチシズム論」をやってみたい。公演を前にけっこう大風呂敷です。
大谷 たぶんみんな、まだ「カタイ」というか、何となくテーマが漠然としていて芝居に絡めて話さないと、話しにくいのかなぁ〜という気がするんんですけど。まあ、寺田さん! なんとかのろしを上げてくださいよ!
寺田 ははは、これ何、お○○ことかそういうの言っていいの?
大谷 ピー! ピー!
寺田 いけないの?
大谷 べつにいいですよ。
香川 添削するんでしょ?
大谷 いや、そっち方面からネットで検索してくる方々にも夜の樹のホームページを見てもらえて、「夜の樹」にもいろんな道が開けるかも。
和田 今日の話題って、オレたちの普段生活している中でのある意味「タブー」の領域に、足をつっ込むわけじゃないか。「タブーじゃないよ。オレたちフリーだから、自由人だから、『エロス』をタブーになんかしないよ!」ってのも、オレは嘘だと思うんだよね。オレたち、ガキのころから、隠微なもの、恥ずかしいコトとして、ずーと隠されてきて、それをたてまえ上は受け入れて育ってきた。そのタブーを犯したり、犯したことにひるんだり、犯したことの達成感に感動したり、そういうブレというか緊張感の中で生きてきたよね。だから、どっちか極端に「ソノことはひと言も触れません」じゃつまんないし、かといって、まったく「フリーだよ!」っていって、何でもありじゃどっちも針が振れすぎるっていか……。
大谷 たしかに、自由人だから何でもフリーってのはやっぱり面白くないと思うんですよね
和田 逆に勃起しないよね。
寺田 勃起しない「エロチシズム」もあると思うんだよね。(笑)
和田 (笑)ヤダね、それ。
寺田 あると思いますよ、いやあります。子供の好奇心的なエロチシズムは勃起しないです。
和田 ほんとかよ。
寺田 ような気がしますけど。勃起はただ……。
力強く勃起と発言したとき、
玉井 ……テープ起こししたくない……。
一同 (笑)
寺田 勃起はエロチシズムとは別ですね。
大谷 そうかな、やっぱりバロメーターはさぁ、チーター(起つ)するかしないかじゃない?
和田 たしかに、性欲とエロチシズムは、はっきり違うよな。
寺田 違いますよね。エロチシズムってのはあくまでも、現代人が創ったんじゃないですか?
和田 いや、けっこう古いと思うけど。人間がある意味での自意識を持ったときが始まりじゃないかな。つまり人間が動物から離れようとしたときに、まずタブーが生まれて、そのタブーを逆に犯すというカタチでエロチシズムが生まれてきてるからね。つまり動物と同じ性欲があって、ソレをオレたちの祖先の人間が「オレたちは動物じゃねぇんだ! あんな見苦しい動物的なことからオレたちは人間としてワンランク上の存在になるんだ」って意識を持ったときに、「動物的なもの」「汚れたもの」に対する嫌悪感、タブーが生まれたんだよね。糞尿の匂いや、排泄行為、汚物、普段の生活から遠ざけようとした、それと同じ延長線上で、排泄器官に隣接した、つまり、汚物まみれの出産現場やセックスを隠そうとして、そういう、動物から離れようとする段階でははっきりタブーが生まれてきちゃって、そのタブーを今度は逆に、タブーを犯すことの快感というか、秘められた、禁じられたことを逆らって犯すことに、ヒロイズムや性的な興奮を覚えるというところにエロチシズムが生まれてくるわけだから、段階として、ふたつ踏んでるんだよね、なんか学問になっちゃった……。こういうのは次でやろうと思ったんだけど……。
大谷 今の、動物になりたくないっていうのは、結局やることは同じわけじゃないですか、動物なんて野原でシコシコやるわけじゃないですか。そうすると「隠す」ことだけですよね、やらないわけにいかないじゃないですか。
和田 結局やるんだけど、そのときの快感というのは、掟を破って、またもとの動物に戻ろうよって言うんじゃなくて、「タブーなんてやだよ」って踏み込むときに、さらに動物よりももっと離れたところで、意識的に動物から離れよう、もう一段階遠いところで、あえて罪を犯そうというときに生まれてくる「意識」ってのが、たぶんエロチシズムだと思うんだけど。
大谷 ワンランク上がってヤルってわけですね。
和田 それが罪の意識をともなった「エロチシズム」、「侵犯」。そこでの戦いってのは今でもあるよな、「そんなことはいけません」って親に教わって、「アレは悪いことなんだ、恥ずかしいことなんだ」って禁止をも犯したときの快感。今、ワーワー男だけで話したけど、一番興味あるのは女から男の言葉ではなく、エロチシズムについてどう考えるか、普段そのことえをどういうふうに捉えているか考えるかっていうのを聞きたいよね。
大谷 それは、もう少し男性陣がワーワーしゃべって、場が柔らかくならないと無理かなァと思って男性陣に振ってるんですけど。
和田 なぜオレたちがエロチシズムについてしゃべろうとしているのか。やっぱりオレたち自身が「禁を破る」という異端行為に対する本来的な加担と、「ホントのことをなんとか表現したいよ」っていう、ものを創る時ときの態度と「エロチシズム」は、もの凄く関わりがある、「試される」って気がするんだよね。エロチシズムの問題を、どうオレたち自身が、作品として、表現として捉えるか。日常生活でもどう捉えるか、けっこう役者としても、芝居を創る上でも、「試される部分」だってので、意を決して今回このテーマを持ってきたわけだけど。
大谷 今、タブーって少ないじゃないですか、これだけ情報が溢れているから、雑誌も、メディアもインターネットももちろんそうだし。その中で、隠されている部分ってのが何なのかなぁ〜、っていうのってあると思うんですよね。はたしてそれは本当に隠されているのかってのも疑問だし。
和田 そこがとても大切なところで、タブーがなくなったてこと自身が、ある意味で、ニセの制度、「擬制」だと思うんだよ。本当にオレたちはエロスのことについて、「あからさまになれるのか? 隠してないのか?」っていうと、じつは、いわゆるエロ産業ってのはあるよ、あれはあれで飯食ってる奴はいるよ、儲かるためにやってるわけだけど。しかし、オレたちがしゃべろうとしているエロチシズムってのとその問題とはチョット違うよな。そうすると、本当にオレたちにとって、性の問題にタブーはないか? そのことをオレたちが自前で、オレたち自身の心の中のエロチシズムっていうのをどう捉えているのかってことを、本当に本音でしゃべらないと、そこは出てこないって気がするんだけど。
大谷 それは難しいですね。
和田 エロチシズムの、さっき言ったタブーの問題みたいなのは、すげぇ歴史的なスパンというか、歴史的な過程で捉えた場合には、ガンとして変わらなくオレたちの無意識にも残っている、嫌悪感と、あるいは憧れと、タブーに対するのめり込み方っていうか、好みというか、そういうものっていうのは、たかだかに何百年か何十年の時代の、さっき言ったニセの制度みたいなものがすっ飛ぶくらい、根深くあると思うんだよ。
大谷 チョット話しは戻るんですけど、今回は、みんなが本音で語らなくちゃいけないわけじゃないですか、それで本音で語った時点で、まあ、語れるかどうかわからないですけど、それぞれが本音で語るってことは、恥ずかしさをなくすわけじゃないですか。
和田 本音で語るってこと自身がすげぇ疑わしいよな。
大谷 だからどこかで、隠しながらしゃべるわけじゃないですか。隠された部分をなんとか隠しながら、言葉にしようと……。
和田 少なくとも、正直になるとしたら「本音ではしゃべれませんよ」ってとこは本音でしゃべる。
一同 (笑)
寺田 しかも、本題に入るまでがこれだけ長い。
一同 (笑)
大谷 まぁ今までの話は、とりあえず置いておいて、とりあえずもう少し楽なところから話していったほうが話しやすいんじゃないかなぁと、その中でポロポロ出てくるところを拾えたらイイんじゃないかなぁ〜、と、思うんですけど。
寺田 この状態でさぁ、女の人に話してもらうってのは、オレたちにとっちゃ、公開的エロスというか。
大谷 セクハラだ!
玉井 セクハラってイイ選択かもしれない。
大谷 女性が入ってきました。
玉井 セクハラだったら言えるかも。
大谷 言ってよ!
玉井 セクハラって、むつかしくって、職場とかで上司が「うへぇ〜〜」って言って肩もんできて、それがもっと露骨に「う〜、う〜、う〜」って、もんでくると「チョットやめてください!」って言えるけど、サラッと撫でる程度でいなくなってしまう。もうひと押し来てくれたたら「セクハラ!」って言えるのに。
和田 「セクハラ」でつまらないのは、「そんな話は色ぽくないよ」ということ自身がセクハラだと言われると困るんだけど。男と女がセクハラという言葉を真ん中に置いて向き合っても、そこではお互いに欲情しないよね。
玉井 しなくてイイんですけど。
一同 (笑)
寺田 男だけがしている可能性はあるよな。
玉井 逆に、男の方が意識し過ぎている場合もありますよね。
玉井 相手によるってのが、正直なところですけど
寺田 そりゃそうだよ! 基本的にはな。
玉井 同じことされても、セクハラ! って思う人もいれば、
寺田 あっ、そうゆうことね。
玉井 そうそう。
寺田 男だって相手を選ぶわけだからさぁ。
和田 セクハラの問題って、むしろ礼儀作法の問題なんだよね。
寺田 そうですよ! マナーの問題。
和田 性の問題じゃなくて、マナーの問題、
玉井 マナーの問題! 終わり。
和田 オレがさっき欲情しないって言ったのは、マナーの話をしても欲情しない、男と女が向き合うときの、カタチがさぁ、つまりエロチシズムの問題を巡って向き合うのと、マナーの問題を巡って向き合うのとじゃ全然違ってくるよね。
寺田 女の側からのマナーで、しかし、男の方はひと撫でで「イッてる」可能性もある。そういうマニアックなエロチシズムもある。
和田 セクハラというカタチで掟を破って?
寺田 「うぉ〜こりゃ手応えあった!」って言ってトイレ行って、イッてる可能性もある。「これで仕事できるぞ〜シルブプレ〜」みたいなもんだよ。
玉井 ……わけわかんない。
寺田 ネタ的には、一方的なもんですね、セクハラは。
和田 今、寺田が言ったみたいにひと撫でしただけで男がイッてるってのは、手前ひとりの、一方だけの問題じゃない。なんか、これから話したいエロチシズムの問題ってのは、単独のものではない、つまり、「オナーニ」ではない……、
大谷 チョット待ってください! 「オナーニ」じゃなくて「オナニー」ですから。
玉井 ばかばかし。
寺田 そう見られたり見せたりってとかっていうのはもうやめましょうね、気持ち悪いから。それしかないんですから。オナーニの話は……。
大谷 でも、自慰行為は全然遠いんですか? エロチシズムとは。
和田 なんか、オレの思いこみかな、あまりにも挫折したカタチでね。つまり、あれは仕方なしじゃない。純愛路線を語るつもりはないけれど、ホントに相手に惚れてさぁ、相手にも惚れられてさぁ、そこで成り立つ性的な行為について……、
大谷 確かに、自慰行為って二次元的というか、
和田 挫折だよな。
大谷 ま、挫……う〜ん……ハハ……どう?(笑)
寺田 ザセツ。
和田 聖書でも「オナン」の問題はすげぇ評判悪いもん。
大谷 あ、そうなんですか?
和田 カインの弟か兄貴だだけどね、対象なしに地面に向かって出しちゃって、それから「オナニー」って言葉が生まれた。
大谷 ああ、そのオナンって人が語源なんですか?
和田 うん、それで「とんでもない奴だ!」てんで、単独の性愛行為の評判が決定的に悪くなった。アハハ。
大谷 あの、オレ、前なんかあの、本か何かで読んだんですけど、その、未開の地ってあれかもしんないですけど、原住民の人がその……男の人が、土に穴掘ってあのオナニーをするんですよ。大地に種をこう自分の種を蒔くというか……そういうのがあるんですよ、ま、オナニーって言うかどうかちょっとわかんないですけどね。その……オレ写真見たんですけど、ホントにこう、うつ伏せに、こう土に入ってるですよ、アレが。それで勃起することが凄いなって、オレは思ったんだけど。(笑)その、う〜ん、それもやっぱしその動物とはまたちょっとちがうのかなあ……。
和田 儀式だね。
大谷 儀式、まあ、儀式ですよね。
和田 そのとき、女はそれ見てるの?
大谷 そこまであれじゃ……。(笑)むしろ見てないというか、そこまでは詳しくは覚えてないですけど……ただ、あの色の黒い人が地面にこう、うつ伏せになってる写真を見て、凄いなあ……不思議だなあ、と思って……。
和田 オレ、それ初めて聞いた。
大谷 ああそうですか。あながち、その、それをオナニーとか呼ぶかどうかわかんないですけど。
和田 もしかしたら、あれだね、そっちの方が古い五穀豊穣かなんかの儀式で、後から来た征服者の種族が「そんな下らん儀式はヤメロ」てんで、それが旧約聖書にオナンの話として残ったのかもね。だとしたら、オナニーは、五穀豊穣・種族繁栄の儀式として、エライんだ。聖書の評価のほうがインチキなんだ。(笑)
寺田 それは、真面目にやってると思う?
大谷 ……(笑)不真面目にやってないよ。(笑)やっぱりその自慰行為ってその……いわば頭使うわけじゃないですか……頭使うって変ですけど……、
和田 イマジネーション。
大谷 イマジネーション。それはやっぱりエロチシズムとそんなに遠くないって気がしてですけど……。
和田 そう、よく聞くよね、「普通のセックスよりもオナニーのほうが、上等だというか、イマジネーションとしては、はるかに豊かである」って。でも、さっきから言ってるけど、どうもオレは根が単純なのかな。やっぱり……対象がほしいなあ。ほしいなあって、なんだけど……。
大谷 そりゃ、自慰行為もそうじゃないですか? 対象がいる……。
和田 つまり、自慰行為のイマジネーションってのは、あくまでも自己発信・自己完結だろう? 相手がいる場合には、相手からの発信とこっちからの発信。発信と受信の相互関係が成り立つじゃないか。なんか、この違いってのはものすごく大きいって気がする。
大谷 大きいですよね。たとえばその誰でもいいんですけど、優香ちゃんを想像してオナニーをするとするじゃないですか? 優香ちゃんを和田さんがご存知かどうか知らないんですけど……、あの……自分の好きな優香ちゃんでいてくれるわけですよね。やっぱり要は……僕ひとりの場合は……、
和田 関係が閉ざされてるよね。
大谷 閉ざされてるんです。だから……その……向こうからね、あのブルンブルンとおっぱい来ても、それは自分の考えというか……ホントはブルンブルンと来ないかもしれないし……。(笑)
和田 つまり、自分が独裁者になって対象を創りあげるわけじゃないか。ところがオレ、ホントの……ホントって変な話だけど、オレがまともに取り上げたいと思っている、考えたいと思っているエロチシズムってのは、やっぱり……自分とまったく違う相手との関係の中で、その関係の中で浮かび上がってくる、半分は予想を裏切られるというか、自分の意のままにならない、独裁者になりえないところでの関係から始まる……そっから生まれてくるエロチシズムのオコボレにあずかるとオレは「アア、生きてて良かった」って思っちゃう。(笑)いや、これ雑談だけど、京都で芋茎(ズイキ)売ってる露天のおばさんに「これ何に使うんですか?」って聞いたら、「男と女がくぅあんくぅえいするときに使います」って教えてくれた。「くぅあんくぅえい」って言い方がものすごくオレそのときに新鮮だったんだけどね。やっぱり、ズイキは別にして、「関係」だと思うんだ。
大谷 ちょっとこれ、*印で注釈いれといて。(笑)
玉井 わかった、リンク貼っとく。(笑)
大谷 う〜ん、やっぱその……、
和田 今のそれ、みんなに聞いてみようか。相手との関係で始まるのか、そうじゃなくても始まるのか。オレだけが言っちゃったから……。
大谷 僕も結構言いましたから……言ってないのは……ええっと……あ、いた! 始まってからまだ一度も発言してない古口くんが堰を切ったようにしゃべり出す。
古口 なっ、なんについて?
大谷 まあ、自慰行為だね。
古口 自慰行為?
大谷 まあべつに自慰じゃなくてもいいけど……その前のエロチシズムとか、なんか、今まで聞いてた中で……なんか。
和田 要するに、関係から始まるのか、単独でも成り立つのかってことエロチシズムが。
古口 単独ってのは大谷さんが言ったようにオナニーのこと?
和田 そう。
古口 ああ、でも、まあ、そのエロス、エロチシズムってのが何なのかって話なんですけど……それ自体まだちょっとイメージがつかめないんで……微妙なんですけど……。
大谷 そうだよね、広いもん。
古口 なんとなく、イメージではオナニーは入んないんじゃないのかなっていう気がするんですけどね……。
玉井 大谷さん、ちょっと寂しそう。(笑)
古口 オナニーと……、
大谷 寂しそうなのは寺田さんだよ。
古口 オレはでもオナニーと……、
寺田 残念だなあ。
古口 オナニーとセックスとふたつは、やっぱ、両方とも外したところから考えた方がいいような気がするんですけど自分では……、
和田 え、セックスも?
古口 はい、そのふたつは、当たり前じゃないかって、そんな気がしちゃうんですよね。ええ。べつになんかあえて題材にしなくてもエロスじゃないかって、エロスそのものじゃないかっていう気がしちゃうんですよ。性欲そのものじゃないかって……。
大谷 何が?
古口 ま、オナニー、セックスふたつとも……なんかそれ以外の話じゃないんですか? それを除外した部分……、
和田 いや、ちょっとそれ、オレちょっとしゃべりすぎだけれども、あの……性欲じゃない部分でエロチシズムの問題を話すってのはオレは賛成なんだけど、セックスそのものの中にね、セックスそのものってのは物凄く深いって言うか、具体的でありなおかつ……宇宙的っていうとオーバーだけども、深い問題じゃない。いくらだって埋没できる、その中にもぐり込んだらきりがないよっていう、感覚的な意味でも、観念的な意味でも。それ除外するっていうと、オレは意表をつかれるんだよね。そのセックスを除外する。あからさまにいうと、性行為ね、性行為そのものの中にいくらでもエロスの問題はあるし、って気がするんだけど。今はそれと同じようにオナニーの中にあるかってとこまで話してきたんだけど。
古口 オレは両方抜いたところになんかあるような気がしてる……。
大谷 オレは経験を話してる。両方……。
和田 ただ、オレは男だから女のあれは分かんないけども……性行為のさなかに自分に襲ってくる感覚の問題とかイメージとか観念の問題てのは、めちゃくちゃ具体的にあるわけじゃない。それ抜きにしては語れないっていう気がするんだよね。つまり、あの……女と抱き合うよなぁ……それで、具体的な性行為に入るよなぁ、でそのときの、入ったときから、そのプロセスそのものの中での体験というか、意識の流れみたいなものも、物凄く具体的だし、豊かにいろんなものがその中に含まれてると思うし、それから最終的にあの……オルガスムの瞬間から、その後のすべての中にはさ、あらゆるなんか、こう、要素というか、いくら話しても言葉にしきれないような……、
大谷 それは男性側の意見ですか?
和田 いや、じつを言うと、オレは、むしろ男なんて乏しくて、女の方が圧倒的に豊かだと思う。その「男は乏しいな」って思いが、男のスケベ根性をかきたてて、だからこう、なんか人妻の性体験とか、いろいろ読むわけだよ。何度読んでもオレはドキドキするんだよね、その、「あ、こういう感じでイクのか」とか、「ちょっと飾りがあるけどホントカヨ」とか、いくらでもその興味尽きない。その興味がスケベ根性を通り越して、人間存在って何なんだとか、関係ってとこから何が生まれてくるのか、あるいはもっと具体的に言うと、ペニスが関わることによって、女がどう変わるのか、何を体験するのか、何をイメージするのか、その果てで、イクってなんなんだ。オレの肉体が介在して、肉体以外あんまり介在してないけど、せっせと励んでるだけで、ただそれでも、これだけ豊かに女がこう変わってくれるというか、なんかこうオレゆえに変わってくれる、何かを体験してくれているってことは、すごい感動的なことだし、それはなんか、その照り返しを浴びたいというか、その女の感覚の照り返しをちょっとでもいいから浴びたいよという、ほとんどそれがオレのスケベ人生、スケベ根性の支えになってる。いくらでも感動するし、汲めども尽きない興味が中にあるし。それがオレにとっちゃセックスそのもの、いやエロチシズムそのもの。
大谷 あの……それをふたつに割ると、あの自慰行為も入ってくるのかなって気がするんですけど……。
寺田 オ・ナニ?(笑)
大谷 うん、別にオレ、オナニーがすきなわけじゃないんですけど……。
寺田 オレすきだよ。
大谷 オレね、あんまりしないんだよね……。
寺田 オレもしないけどね。
和田 オレはとにかく照り返しを浴びたい。
大谷 そりゃ、浴びたいですよ、僕も照り返しは……。
和田 屈折した、高度に発達して熟れきった文明社会のエロチシズムってのがあるんだろうけど、とりあえずオレは性的な現場でのその照り返し論ね。で、このあたりで女性の話を聞きたい。
玉井 いや、なんか頭の中真っ白なんですけど……。
香川 ますます、なんか何にも言えなくなっちゃう。
和田 あっそうか、何の話してんのかって?
玉井 いや、理屈としてはわかりますけど……感覚として全然つかめないんですよね……。
大谷 あ、そう、何が?
玉井 う〜ん、わかんないですね、なにが……と言うか、女にとってエロスって、なにかな……。
香川 たとえば、人がキスしてるのを見たってなんとも思わない、というか、不快に思うだけ。
玉井 ところがね、あたしもべつになんとも思わないけども、あの、ほら、ドラマとかテレビとかで、友だちと話してて、「ちょっとあれ、何、あたしムラムラしちゃったわ」ってね。ま、冗談でね、そういうこと言う友だちがいてね、大爆笑しちゃったんだけど。ああそうか、ムラムラしたのかって思うぐらいなんけど……。
和田 「ムラムラ」って、むかつく「ムラムラ」じゃなくて?
玉井 うんそう、いいなあってとこなんだろうけど……それぐらいしかないな……。
香川 でも、それってドラマだから前工程があって……きれいだからそう思うんで……。電車の中でとかキスしてる人いるじゃないですか、見てて不快に思うだけ。
玉井 それは不快ですよねえ。
大谷 テレビのドラマとかはどうなんですか?
香川 ムラムラはきませんよ。ああきれいだなって思うこともあれば、ちょっとなあって思うこともある。
大谷 きれいだなって。
和田 いや人のを見る話じゃなくて、その……最初に、性欲ってのは動物的なあれで排除しようって言ったけど、たとえば欲情するってときに、エロチックな意味で欲情するってことはあると思う。女性にとってエロチックに欲情するってのはどういうことなのか、まずそこを知りたい。
香川 そんな真剣な顔で言われても困るんですけどね……。
和田 やっぱり、真剣に話すことじゃないんだ。(笑)
寺田 あの、和田さんが言ってるそのエロチックってのは、どういうふうに解釈したらいい?
和田 普段、オレたち、暮らしのための小賢しい段取りして、無駄を省く工夫をして、人に騙されない工夫して、小銭儲けて、要するにケツの穴をクッとつぼめて、「今日もけっこう抜け目なく真面目に生きたぞ」って満足して寝る、っていう日常があるよね。ところが、セックスってのはそれとはまったく反対の、無駄で無駄使いといえばこれほどの無駄はない、ズルズルと何かを自分に許しちゃう、それこそ「ゼイタクは敵だ」じゃなくて「ゼイタクは素敵だ」のものじゃない。
寺田 ま、生産的ではない……、
和田 生産的でない。時間つぶしだし。エネルギー使っちゃうし、無駄にね。でも、そのことがめちゃ大事になるってのは日常とお祭りとの違いと同じくらい特殊な瞬間じゃないか。そうじゃないとは言わせない。
大谷 (笑)それは、わかんないですけどね。
寺田 要するにその欲情するってことですね、エロチック、今のね。中身の種類のことじゃなくて、とりあえず欲情という、
大谷 幅を広くしてね。
寺田 ラッセゾーンのこと。
玉井 なに、ラッセゾーンって?
寺田 マッセゾーン。
玉井 マッセゾーン?
寺田 いや、欲情するってこと。
大谷 *印入れて、リンク貼っといて。
玉井 はい、リンクね。(※注 リンク先、みつからず……。)
寺田 と言うことですね、わかりました。
大谷 寺田さんがわかったって……、
寺田 いや、オレ聞くにあたって、あのどのエロチックなのかなってのがわかってないと、聞けないでしょうよ、女性の意見が。わかった、まずは穴掘ることから。
大谷 ど、どうなの欲情するって。そう、女性が欲情するってわかんないね。
寺田 えっ? そう? するでしょ!
大谷 そりゃ、するのはわかるけど、いつするのか。オレらエロ本見たり、エロ……、
寺田 それは年中すると思うなオレは。
大谷 ああそうなのかね。
玉井 でもきっと男の人みたいに、その、露骨にね、裸を見たりとかね……もっと感覚的にその視覚的にドーンってものじゃなくて、オブラートにつつまれていればつつまれているほど、なんとなくこう……そういう方向にいくんじゃないかなって気がする……女の人のほうが。
和田 つまり、オブラートにつつんでない、そのあからさまなアレには、ある種の嫌悪感がある。
玉井 それが、その、香川さんがさっきいやだって言った……、
大谷 キスしたりね。
和田 オレ、女性にまず取っ払って聞きたいと思うのは、オレがさっきビンビン来るとか欲情するって言ったけど、なんか女性ん中には、その……結婚を前提にしたお付き合いとか、それからお行儀のいい、上品だけどムードのある会話から始まって、そういうプロセス踏んでくれたら、みたいな綺麗ごとの話から始めてくれるのはいいんだけど、ずーっと聞いていると、全部きれいな話で終わっちゃう、みたいなことがよくあるわけで、そうじゃなくて、女性は女性なりに、ここからプツンと切れて、その、クァ〜と墜ちてく、みたいなのがあるに違いないと思うんだけど、そのことについては、なかなか語ってくれない。だから今の亜子の言うオブラートってのはいいんだよ。オブラートのままドーンと言ってくれたらいいんだけど、あくまでもオブラートに包んだ美しい物語で終わっちゃうのは「嘘だい」っていうか、聞きたくないよ、ってのがある。
大谷 和田さん、それはまだ……ちょっと、あの助走なんで、和田さんがそこまで言っちゃうと、言いづらくなっちゃうんで……、
和田 そうかそうか……。
寺田 オブラートって言うのは、何がオブラートなの?
玉井 えっ? そういう露骨な表現とか、もろ裸とか……そういうものに、
寺田 それは何に対して?
玉井 まあ、男の人が言う、そういういきなり欲情するとかっていうもの……男の人が裸を見て欲情するとか、ビデオ見たり本を見たりとかして欲情するって、わりと露骨なものじゃない。
和田 亜子ね、そこ誤解がある。男ったって色んな男がいるしね、あのそういう男も確かにいるけどもね、それはある意味で、さっきのニセの制度じゃないけど、エロ産業みたいなものでさ、いきなり裸とか、この雑誌〜! みたいな、そりゃたしかにオレも思春期、高校生のときは、何見たって欲情したよ。
玉井 それは水着着てても何着ててもいいんですけども……女の人はそういうものじゃないところでも、べつに欲情したりとかあるんじゃあないかな……。
大谷 あ、そういうこと聞かせてよ……。
玉井 あの例えば、ちょっとした仕草とか……あの、よく女の人が言うのは、男性の手が好き……、
大谷 うんうんうん。
寺田 よく……、
大谷 これか……(と、すごく下品な手つき)。(笑)
玉井 ちゃう、ちゃう、ちゃう。手が好きとか言う人がいて……あっ、その手つきって言う……。
大谷 教えてそれ。
玉井 あたしはべつに、そういうこと思ったことないから。(笑)
大谷 なんだ……。
寺田 それ、一般論の話してんの?
玉井 そうそうそう……。
和田 なんだよ……。
寺田 なんか、話がどんどん遠くなってく。
玉井 あたしは全然手が好きとか、そういうことはないんだけど……。
大谷 どこが好きなの?
寺田 何が好きなの? 早く言えよ。(笑)
玉井 あたし、だから、眼光鋭い目!
和田 あ、三白眼!
寺田 あっ、ああ、そうかそうか。
玉井 きっと、その目で……、
寺田 目つきが悪いやつがいいんだな。
大谷 渡辺謙みたいな。
和田 「その目で……」何なんだ?
玉井 そういう目で見つめられたらきっともう動けないわぁとか、さあ。
大谷 仲代達也みたいな。
玉井 違う!(笑)
寺田 なんで仲代達也なんだ……。
和田 そのときさ、その見つめられたら動けないわってときに、その、妄想というかその想像をわりと極限まで持っていく? 単なる雰囲気? つまりオレが導こうとしてるのは、つまり、その目に犯されるとか……、
玉井 えっ? そこまではないよですね。なんかきっと……。
寺田 誘導尋問、和田さんの趣味じゃないですか……。
大谷 彼女の意見ですから……。
玉井 和田さんの……あの……、
瀬畑 でも、あの、たぶん、今、亜子が「手」って言ったじゃない。男の人のその手にこうされたいっていうのは、ないと思うよ、あたし。
和田 あっ、目と同じで……。
瀬畑 うん同じ。それとは違う。
和田 その辺が違うんだなァ……。
大谷 その辺がピンターかピンターじゃないかですね。(笑)
和田 つまりオレはついさ、「その目で露わにさらされたわたしを見てほしい」みたいなところまでいくのかと思ったけど、そうじゃないんだね。
瀬畑 違うでしょ?
玉井 実際に目の前にいる人からガッとか睨まれたら、「なにメンチ切ってんだよ!」なんて思うくらいだと思うんだけれど、
一同 (笑)
玉井 それは本当想像って言うかイマジネーションだけで結構満足していると言うか……。それですんじゃう話なのよ。
和田 なるほど。
大谷 よくさ、あの……、バックするとき?
玉井 ああ。「車でバックするときに手を助手席のシートに掛けるのが格好いい!」とかって。
寺田 ホントかよ!
玉井 っていう人がいる。
寺田 ええ!? 初めて聞いた!
和田 また「っていう人」の話かよ。しかし、運転を生業(なりわい)としているオレとしちゃあ、聞き捨てならない!
玉井 ちょっと目が輝いてきましたよ。
大谷 だからドア開けて後ろを見ちゃいけないんだよ。
玉井 それじゃあトラックの運転になっちゃうから、ドア開けるのは。
和田 悪かったな、トラックで。
香川 え、でもそれがセクシーっとかって感じるんだ……。
寺田 初めて聞いたよ。
香川 それはないな。格好いいなと思うことはあるけど。
大谷 いや、それはね、すごいセクシャルだって聞いたことがあって、それからオレはドア開けるのはやめて……、
一同 (笑)
香川 嘘でしょー? ドア開けるのなんて格好悪いじゃないですか!(笑)
玉井 トラックはバックミラーが見えないから。
大谷 そそそそそそ、壁だからね、ウヒヒ。
大谷 じゃあ、香川さんは、どの辺がこう、ピュピュピュと来るんですか?
一同 (香川に注目して)……。
大谷 そんな静かにしちゃあいけないよ! みんなは雑談してて。オレだけ聞いているから。
香川 でも今の車の話って、なんか……、セクシャルとかそういうのは関係ないかもしれないんですけれども、普段なんってことない人でも、格好よく見えちゃったりすることってありますよね?
寺田 えーーー?
香川 直接それがセクシャルな方にいくかって言うと、そうではないんだけれども。
和田 そうだね、格好いいってのは、「ベッカム格好いい」「ああそうですか」で終わる問題だからね、それでなんなんだろう?
香川 で、さっきの手がどうとかっていうのは、ちょっとわかる気がするんですけれども……。
大谷 香川さんは、どこがどうなんですか?
香川 わたしですか? わたしはもう、あのー……(含み笑い)。
大谷 何派ですか?
香川 (笑)何派って? あの……、
大谷 テハ(手派)?
香川 いやぁ、相手が積極的に来たら、もう断れない派なんで。(笑)
和田 あ!
香川 直接自分からどうとかっていうんじゃないんですよ。
玉井 押しの一「手派」。
香川 例えば、付き合っている彼氏が横にいて、手とか触ってきたら、「ああ」ってちょっと思ったりとか、そのときはする……。
寺田 「ああ」って嫌だってこと?
香川 嫌じゃなくて、そういうちょっとエッチな気分になってみたりとかするじゃないですか?
一同 (寺田に)嫌ってことはないでしょう!
寺田 ???
瀬畑 わかってないよ(笑)
玉井 わかってますかー?
寺田 ???
大谷 それは完全に誰かと付き合っているとか結婚の対象とか、そういう……、そっちのになってしまって、まったくの無関係なゼロで男と女でいた場合はどうなんですか?
香川 無関係だと、ないんじゃないかなー。
大谷 ない?
香川 わからないですけど……、ない、ないと思いますね。
玉井 ん? なになになに?
瀬畑 ん?
香川 無関係の人とそういうふうになることはないんじゃないかなって……。
寺田 ビビビって来ることはないってこと?
玉井 んー、まあ、無関係な人とそういう感情になるっていうのは、ちょっと考えられないよね。
寺田 ああそう。
玉井 あ、まあそういう人もいるとは思うけれども。
瀬畑 え? じゃあ例えば、無関係って電車の中とか?
香川 いえいえ、そういうのじゃなくて!(笑)
大谷 あまりにも無関係すぎる!
一同 (笑)
玉井 付き合ってて、べつにそんな好きでもないんだけれども、とか。
寺田 ああ、そういうことね。まあ、知り合いとか職場とかね?
大谷 それじゃあ、やっぱり初めに「好きありて」ってことなの、要は?
香川 そう、かな。
玉井 それは個人差もあると思うけども、そうなんじゃないかな? とは思う。
寺田 ああ、そういうもん……。
和田 それね、どこまで同じ話かわかんないけど、オレにもある。スケベ根性でエロティックな本を読むだろ。何が欠落しているかって、物語が雑なんだよね。で、オレが一番望むのはね、ああいうスケベ本で最高に面白いストーリーがあったら「酔えるな」っていうのがあるんだよね。今、現代の文学の中で、ストーリーなんてどうでもいいんだよ、何だって。私小説だろうと何だろうと。ただ、ああいうカストリ文学ほどね、逆に物語を磨いてほしいって思う。だから普段の生活の中にも、エロティックな関係に憧れるみたいな幻想はあって、どこかに、ズーとひと筋に引き込まれるような、クラクラするような「アブナイ物語があったらな」っていうのは、我ながら、男ながら、あるね。
大谷 ストーリーって言うのはその……、かなりリアリティがあるストーリーってことですよね、要は。その……、創られたストーリーって言うよりは。
和田 いくらビックリするような奇天烈な物語でもそれがリアルだったら、リアルというか納得できたら……、なんかね、つまり文学的な物語で感動するんていうのは、オレ、もういいんだよ。ただ、欲情するのにはね、物語がいるなーていうのは、逆にあるの。
瀬畑 へー、これをわたし、男の人の口から聞くとは思わなかった。
大谷 (声色を変えて)あのー、ここから僕じゃないんですけど……、
玉井 Aさん、Oさん。(笑)
大谷 (アダルト)ビデオとか観ても、やっぱりその……、
玉井 あ、企画派だから?
大谷 そうそう。……ってなんでオレの趣味知っているんだよ!
一同 (笑)
玉井 だって、前に言っていたもん。
大谷 ああそうか。やっぱり女優派じゃなくて、べつにいくら可愛くても、まあ不細工でも何でもいいんですけど、その……、本当じゃないと面白くない。本当に見せてくれないと面白くないというか。だから、突拍子もないことをやっていたりしてもいいんですけど、やっぱりそこにその女優さんなり女の人の何かが見えてこないと、欲情しない、欲情しないというか、ダメなビデオだと思っちゃうんですよね、要は。その辺でやっぱり和田さんが言っていた代々木(忠)監督が好きな理由、って言うのは、オレはそこら辺が代々木監督が好きって言うか。
和田 あ、じゃあ今の物語とはまたちょっと違うね?
大谷 物語と言えるかわからないですけど、人が見えない……、かなりのリアリティが見えないと、イヤだと言うか。
和田 話をそっちへ持ってっちゃうと、オレも代々木忠と言うか、素人ものを決定的に支持するよ。感動するからね。
玉井 (つぶやく)いいのか、それで……、いいのか、本当に……。
香川 (笑)
和田 うん。
玉井 「うん」って……。(笑)
和田 うん、本当に感動するよ、それは。女優がいくら「これでもか!」ってやって見せてくれたって、「そこまで自分を安売りするか」って思うだけで、ちっとも感動しない。ただ、素人が意表をついたモロナマのプロセスと反応を見せてくれストと、本当に感動する。(笑)ただ、女優でやるんだったら、今言った、もっと徹底的に優れた物語を見せてくれよ、その果てで男の劣情を刺激してくれるのだったら、「エライ!」と認めてやるよ、っていうのがある。
大谷 その物語というのがよくわからないというか……、
和田 じつに見事な物語。つまりフィクションが唯一成り立つのが、オレはエロ文学でしか、もはや、ないと思っている。他ではどんな物語、例えば 所謂純文学でね、見事な物語を作ってくれる奴がいたってオレは感動しない。三島(由紀夫)にしたって、古井由吉にしたって、そっちに持っていった作品には感動しない。いま唯一物語を求められているのはエロ文学で、もっと優れた物語が出てきたらいいな、って気がする。だから、団鬼六なんて結構いいセンいっているけども。あいつは女をエライと思ってない。オレが書きたいくらいだ。
瀬畑 およしなさい。
一同 (笑)
玉井 塚本晋也監督の「六月の蛇」はどうですか?
和田 え? 知らない。映画?
玉井 ええ。ストーカーに脅迫された人妻の肉体的解放を、青味がかったモノクロ映像で描いているんだけど、電話相談室で働く女主人公のもとに、彼女の自慰行為を盗撮した写真が送られてくる……。そんなストーリーだった。
和田 いいストーリーだった?
玉井 あまり覚えていないんです。誰も観てないんじゃ……。
大谷 すみません。不勉強です。(笑)ちょっと戻るんですけど、団鬼六は要はSMじゃないですか。その、SMとかフェチズムっていうのは、どう考えていますか? やっぱり、ボクが言う一元的な、自慰行為の成れの果てなのか、関係を大事にしたものなのか……。
和田 うん、オレはやっぱりある意味挫折だと思う。で、それをあまり主張すると、オレは本当に健康的なお目出度い、健康優良児的なセックスをイメージしている男だと思われちゃうかもしれないけど、憧れも含めてね、オレはやっぱり男と女の関係から始まるエロチシズムっていうのをあくまでも大事にしたいっていう気がして、そこからの挫折というのは「つらいな」っていう感じはあるし。そこにあるリアリズムは認めるよ。わかるなっていうのはあるけれども、主流じゃないというか本当じゃないなって気がする。
大谷 ああ、そうですか。オレはSMって本当にもっと、どっちかって言うと逆じゃないかなって気がしていたんですけれど。
和田 なるほど、たしかに男と女の関係を見つめていく中でのSMの問題っていうのはあると思う。つまりそれは「供犠(きょうぎ)」っていう、生贄を捧げる、神に捧げる儀式と性行為っていうのは、ダブっているってバタイユが言っているんだけれども、バターユの話は次回にまわすとして、やっぱり性行為の中に、男が女を犯すという形の中で、しかもオレがさっき言った照り返しみたいなもので、それだけだったら、犯される側と犯す側っていうセクハラの問題になっちゃうけれども。そうじゃなくて、犯される側の女の快感の照り返しを男が浴びて、そのまた照り返しを女が浴びるっていうふうになってくると、どっちがどっちだかわかんなくなっちゃうからね。そこのとこでサドマゾの問題っていうのは「性」そのものだよね。
大谷 すごい有名なSの女王様がやっぱり、Mを経験しない女王様は、本当のいいSの女王様になれないって言っていたんですよ。オレ、すごいなーって思って。「ああ!」って、本当にこう膝を打ったと言うか。
和田 SとMの問題はどう思う?
玉井 マゾッホとマルキドサドですか? はー、よくSMの究極は死だなんてことを言う……。で、一時期ソフトSMなんて言葉が流行ったりして、そんなのは 嘘だ! なんて言ってたりっていうのもあったみたいだけど……、
大谷 性産業だからね。だから遊びじゃない、やっぱその死に近づきたいみたいな、SMに近づきたいみたいな。
玉井 以前よく、「あなたはS派? わたしは何派?」みたいな話をしたことがあって、けっこうあたしの周りは、M派っていう人が多かったんですよね。わたしの取った統計によりますと。(笑)
和田 亜子はどうなの?
玉井 あたしはどっちなんだろうな……わかんないなぁ……。
大谷 わかんなくはないだろう?
玉井 あの、マルキドサドの本は結構ひと通り読んだんですけども、痛そうだな、としか思えなくって。……うん、それぐらいだなぁ。
和田 でもSとMの問題っていうのはさ、オレたちの現実の性的な体験とか、性的な事柄にどこかでへばり付いているよな。少なくともオレはそれは認めるなぁ。今ちょっと自分でもわかんないんだけども。ただ、オレの中にいろんなものがまとわり付いていることは確かなんだ。だから、亜子の言うどっちかわかんないっていうのは、わかんないなぁ。
大谷 まあ、スイッチヒッターみたいなね。
玉井 何? スイッチヒッターって。
大谷 バッターボックスのどっちにも入れる。右でも打てるし、左でも打てる。
玉井 ああー、そういうのスイッチヒッターって言うの? そうね、ケースバイケースなのかもね。ときにはMになり、ときにはSになりっていうのがあるのかもしれない。
和田 ただオレたち、いくらさっき言ったエロチシズムっていうのは祭りと同じで、特殊なことだって言うけれども、オレたち日常生活の中からふっと性行為に移ったりするわけじゃないか、ましてやSとMの問題ってのはさ、そこまでビューンと飛び跳ねて特殊空間に行けるわけじゃないから、どこかで照れるよな。とことんまで行けねえよ、っていうか、そこまでちょっと、オレはそこまではまだ本物じゃないなって思ったりさ。
大谷 (いきなりマイクに近づき、囁く)か、香川さんは、S派とM派、どっちなんですか?
香川 えー、基本的にはMかなぁ……。(笑)基本的には、さっき言ったようにやっぱMなんじゃないですか? Sってけっこう攻撃的で、かなりの気力がいりますよね。
瀬畑 あたしこれ、さっきから思っていたんだけど、なんか……、本音は言わないと思う、誰も。
和田 ああ、言っているのは男だけか……。
瀬畑 うん。
和田 それは何でだ? 男は露悪的なのかな? 露出マニアなのか?
瀬畑 ん……、それはあるのかなぁ、わかんないけど。
玉井 なんか、言っちゃったらつまんないっていうのもあるかもしれない。
瀬畑 そうそうそう。傷つけるかも知れないっていうのもあるし。
玉井 ああ……。
和田 あっ、男を?
瀬畑 はい。
寺田 うはははは。
和田 うわぁ〜。
一同 あはははは。
玉井 ちょっとトイレ。(玉井、香川のふたり、さりげなく部屋から出る)
寺田 みんないなくなっちゃったよ。
和田 強烈!(笑)
寺田 オレも絶対女の人は言わないと思いますよ。
瀬畑 うん。だから、この話に巻き込もうとしていること自体が、無理だとあたしは思う。
和田 ほあぁ〜。
瀬畑 だから、じゃあ女同士で話すかって言うと、話さない。
男一同 ふ〜む……。
瀬畑 これは絶対話さない。だから、一般的な話はできるよ。でも本当のことを女は言わないし、言えないと思う。
和田 ……傷つけるから?
瀬畑 うん。そういうふうに思われたくないっていうのもあるし、逆に言えば。「そうだったの、女って!?」って思われるのが嫌だなって。
大谷 そうすると話が一番最初に戻っちゃうわけですね?
瀬畑 うん。
寺田 根本的にね、考え方とか生き方が違うんだよ、男と女っていうのは。
瀬畑 うん、そうなのよ。
大谷 男が四人集まったら、結構グーと奥までいけると思うんですよね、やっぱりね。で、これで女性が入ると奥まで入っていったようで、入っていってない、みたいなふうになっちゃうのかね?
寺田 言葉でどうこう支配したくないんだよ、そういったことをね、女の人っていうのは。言葉で表現してこうだっていうふうに定義づけようとかさ、そういう考えがないと思うんですよね、女の人っていうのは、あんまり。
瀬畑 したくないのよね、できなくはないけれどもしたくないし、したら本当に傷ついちゃう。
一同 ……。
和田 これは暗礁に乗り上げたな。
寺田 もちろんなかにはしゃべれる人もいるとは思いますけどね。
和田 その、セバの言う、傷つくっていうのならわかるんだけれど、傷つけるっていう言い方は、つまり男を傷つけるから? それはどういう意味?
瀬畑 えー、女ってそんなもんだったの! っていう……、
和田 あ、「幻滅させるのが……」っていうことか。
瀬畑 うん、そうそうそう。
和田 オレ、傷つけるっていうのは、男自身の立場がなくなるようなことかと思って……。そうじゃないのね。
寺田 あ〜!
和田 もともと男はさ、立場がないからこんなことしゃべっているわけだけど。
大谷 そうそうそう!
和田 もともとスケベだと思われているし、「ちょうだい、ちょうだい!」っていうのが男だっていうふうに思われているから。
大谷 立場なんかないですよね。
和田 ってことは、女はまだ立場があるんだな。
女一同 あははははは。
和田 いや、オレ、幻滅しないけどなぁ〜。感動はしても幻滅はしないけどなぁ〜。
玉井 和田さんは(幻滅)しないかもしれないですけど。
和田 あっ、そうか! これネットで……。(笑)
大谷 一応、公の話です。(笑)
和田 でもそうなると本当に本音を……、ま、本音って変な話だけど、本音は聞けない。男はただ妄想たくましくする以外ないってことじゃないか。
大谷 うーん……、そりゃあ、聞きたいですよね、やっぱり。
寺田 とりあえず、このメンツではそれはないってこと、いや、しゃべる人も中にはいると思うんですよ、もちろん。平気でしゃべれる人もね、女の人でも。
瀬畑 うん。あたしそれはね、相当作っていると思う。
大谷 うん、うん、うん。平気でしゃべった時点でやっぱり嘘だなっていう。
寺田 (話す女性が)いてほしい願望はありますけどね。
和田 いや、オレにとっちゃあね、つまり、女性っていうのはあくまでも女性だから、なに言われても幻滅はしないよっていうのはあるんだよね、いまさら。
玉井 トラウマになっちゃったりして。(笑)
和田 え? どっちが?
寺田 オレらは幻滅するかもしれない。和田さんのところまでいってればもう幻滅しない!
和田 なんだよ! オレ、どこに行っているんだよ!(笑)
寺田 イヤー、わかんないですけどね。オレとか古口ぐらいはまだ幻滅する可能性あるから!(笑)
和田 いや、(笑)オレが言いたいのは、幻滅しないで感動するよって言ってるんだよ。
寺田 その時点で和田さんはもう、学者的立場から考えていないですか?
和田 そんなことない、生活者として、イチ生活者としてだよ、女の前で汗をかいてる。(笑)
しばし、和田と寺田、ふたりで盛り上がる。
大谷 オレも幻滅はしないですけどね、むしろ喜ばしいというか。
和田 ただ、今のセバの出した問題っていうのはさ、これがなんか村の青年団の寄り合いで男と女がしゃべっているんだったら無理かもしれないけど、なんかもうひとつこじ開けたいのは……、
大谷 それはだから、和田さん、一番最初に言った、「オレたち自由人だから……」っていうのと関わってくるんじゃないですか?
和田 いやっ、そうじゃなくって、つまり……、ものを創る人間っていうのは、もっとテメェ晒したりさ、暴いたりしながら、なおかつ世界に切り込んでいくっていうかさ……、
寺田 (爆笑)世界に!
和田 それが同士じゃないかっていうのがあるけどな。「タブーなしでオレたちはフリーだ! 全部、あらゆるタブーを乗り越えて生きてます」って自慢したいからこういうエロ話しているんじゃなくて、オレたちって、あるものを裏まで見たり中を覗き込んだりして、何かを汲み上げたいっていう仕事しているわけじゃないか。そのメンバーだけでエロスの問題を話したときに、もうちょっと話してくれよっていうのがあるんだよ。たとえネットにそれがさらされたとしてもだよ。「幻滅しないよ」って、そこのところで言いたいんだけど。この程度の貧血気味の一般論だけでお茶濁したりしないで、御身大切の逃げ腰だけじゃなく、すこしは付き合ってくれよ。
大谷 もちろんボクも幻滅しないですけれど、やっぱり、あのー、そうなのかな、って気はしますよね。そこで女優さんが「カー」って開いちゃったら、本当にその恥ずかしさがなくなっちゃうのかなって、逆に言うと。
ここで古口、帰宅時間のためひと足先に引き上げる
玉井 たぶん、そんなに思っているほどロマンチックに感じていないと思うんですよ。
和田 オレたちが考えすぎというか、ある種の憧れを込めて考えすぎているということ?
玉井 うーん……、のような気は……。もっと現実として目の前にそういうことがある。
大谷 それはあくまでもフリだからね、我々の……、
和田 いや、ただそれは痛いところ突かれているのかなっていうのはあるな…。つまり、女に惚れるだろ、そうすると、惚れるってこと自身が、スタンダールの結晶作用じゃないけど、相手に対してどこかで勝手に「幻」の像を結ぶことだからね。「幻」を結んどいて「幻滅しません」て言い切るのは、言葉上の盾だ。
寺田 女にもビビビって欲情する瞬間があるって話してたじゃない。
玉井 欲情っていう感覚とは違うんじゃないかな。その手を見てとか……。
寺田 でも、この人と寝たいとかやりたいとか思う瞬間があるわけじゃない?
玉井 うーうー。
寺田 うー、もういいよ!
瀬畑 逆はあるよ。絶対にこの人とはしたくない。
一同 (笑)
玉井 それはきっと男の人にはありますよ。
大谷 オレないと思う。
和田 在原の業平(ありわらのなりひら)だよね。伊勢物語に出てくる、好きな話なんだけど、どっかの婆さんが、一生懸命、庭の外れの竹藪から見てんだよね 「寝たい寝たい」って、業平を。それを知った業平は、その婆さんに感動して、寝るんだけどね。これ、色道の極致だと思う。あの話にオレそうとう心酔してるから、醜いとか年取ってるとか、あらかじめ出来上がった価値観だけで「こいつとは寝たくない」って口が裂けても言うまいと、ひそかに思って今日まで来た。
玉井 ないのー!? ひーいー。
大谷 ないね。
和田 つまりそこには、物語が必要なんだよ。
玉井 あー物語があればいいんだ。
和田 ひたひたと惚れてくれたらこっちも無条件に感動して寝るよと。物語がなくて誰とでも寝るよってこととは違うんだ。
玉井 それは女も一緒だと思いますよ。
和田 なんだ。
瀬畑 いや、それは逆だと思うの。
玉井 ただ、物語すらありえない。
一同 (笑)
瀬畑 そりゃもうダメよ。
和田 そりゃ男にだってあるよ、意地でも寝ないってのは。
玉井 意地にならなきゃ駄目なんですか?
大谷 うん。負けちゃうから。
寺田 要するに自分の好きな男とは、そうなったりするわけじゃない。「今日はやりたい」って。
玉井 うーん。今日はって言うか……やりたいっていうか……。
寺田 いや、絶対あるはずだ。
一同 (笑)
寺田 じゃ男が行くまで女は絶対やらないのか? それはないよ。絶対嘘だよ。ね、和田さん。
和田 うん。
寺田 ね。いや、そこまで無理にこじ開けようとは思わないけど。
瀬畑 今の話でね。昔読んだエロ本で、作り話しかもしれないけど、それは労働者が山の方に行くのね、働くためにひと冬、とにかく降りれない山で、そこに飯炊きばあさんがひとり。お婆さん、いくつぐらいかはわからないよ、書いてないから。そのお婆さんにあるひとりの男が頼み込んでるわけ、「やらしてくれ、やらしてくれ」って。ずーっと。頼み込んで、でそれでお婆さんもしょうがないと思ったのか、寝てくれたと。そうしたらそのお婆さんが濡れたと書いてあるの読んだときに、あたしはすごく感動したのね。お婆さんに、その男ではなく、それはいい話だなと。
大谷 許容範囲が広ろかった。
瀬畑 ははは。ちょっと違う。
和田 なるほど、女の目から見ると、その話が感動になるんだね。
瀬畑 うん。その本には別にそのことで感動させようとして書いてはないんだけどね。
和田 男だったらつい、そりゃお婆さんも好きだからになっちゃうけど。
大谷 うん。
香川 ええー! そうなんですか? お婆さんは哀れんだんじゃないんですか?
和田 うん。ただ哀れみからだけでは濡れない。しかしその婆さんは哀れみが哀れみのまま、いわば哀れみが哀れみのまま浄化されて欲情にすりかわった。そこに感動がある。
大谷 でも構造上濡れるみたいですね。気持ちよくなくても。たとえばレイプにしても、「濡れてんじゃねぇか、へへ」ってエロ本には書いてあるけど、構造上気持ちよくなくても濡れてしまう。例えばそれで法律上同意したということになってね、その泣きをみて。
和田 法律の方が遅れてるね。ひどい話だ。
瀬畑 それは大勘違いだね。
大谷 うん。そうするとバロメーターは濡れるっていうことじゃないわけじゃないですか。そうすると、バロメーターを教えてくれ! みたいなもんですよね。
瀬畑 そうすると、そのお婆さんに感動したのはなんだったんだろう……。
一同 (笑)
和田 今ふっと思ったけど、たしかに男が一方的に惚れたときにさ、惚れられた女はずいぶん迷惑だったりするんだろうな。何度も迷惑かけた。
大谷 ふふっ。でも具体的にどう迷惑をかけたかがわかんないね、男には。
玉井 感覚的なもんだから、言葉にするのは難しい、ねー。自分がそう思ったから、ほかの人もそうだとは限らないし、手の問題にしてもそうだし、手がセクシーだと思う人がいれば、背中がセクシーだと思う人もいるし。
大谷 セクシーだと思ったって、背中で愛撫されたいとか思わないわけで、
玉井 背中ですりすりされてもね。「寄るなよー」
大谷 直結しないわけでしょ、要は。そこがわかんない。
玉井 若干してなくもないと思うんだけど……。
大谷 そこがどうシンクロするのかわかんないだけど。
玉井 ダイレクトではない。
大谷 うん。
和田 何の話?
玉井 手がセクシーとか。
玉井 「あっ、セクシーな手だな」と思っても、それが直接性的なものに結びつくってわけではない。
大谷 あ、それは、和田さんの本が間違っていたってこと?
玉井 えええ!? そういう部分もあるかもしれないけど、単純にセクシーねって喜んでる部分もあるし。
寺田 じゃそれでその状態で男にせまられて、愛してるからってセックスするの?
玉井 愛してるからって、それなに、決め文句?(笑)
寺田 愛してるからっていう気持ちがあるからするわけ? 女は。
大谷 ハハハ、落としどころだ。
香川 それがないと、ないんじゃないの?
玉井 まあいいかなって。
寺田 だから、愛してるということの意味があるからセックスできるわけ? やっぱりそうなんだ。男はただセックスしたくなって、女は「ああこの人のこと愛してる」って受け入れてセックスするだけ?
大谷 するとエロチシズムは少なくなるね。
寺田 エロチシズムはないよ、ほとんど。
玉井 そうなるとほとんど女は受け身ですよね。
寺田 そうなると男は愚かな存在だよね。全部が愚かとは言わないよ。愛があればそれでセックスが成り立つ、宗教的な骨格があるんだからね。エロチシズムを求めてセックスする必要があるのは男だけになっちゃうけどさ。
玉井 ああ、でもそのセックスという行為にエロチシズムを求めてないかもしれない。エロスって(セックスとは)違う次元かもしれない……。
寺田 怪しいよ、異次元問題か……。
玉井 (香川に)言っていい?
大谷 言っていい、言っていい。
玉井 香川さんが言っちゃ駄目って。
大谷 それは言っちゃダメなの?
玉井 わかんない。
香川 ハハハハー。
大谷 何となくそれなんかね、わからないけどわかるような気がする。
玉井 うー、エロスっていうことじゃないかもしれない。それとは別かもしれない。
大谷 うん。
寺田 別って何が別?
玉井 相手との何か。うー……、相手とのつながり。
大谷 要はセックスが仲介しなくてもいいんだよね。セックスはなくてもエロチシズムは存在するってことだよね。
和田 いや、エロチシズムはなくてもってことだろ?
寺田 なくても、愛でセックスはつながる。
大谷 愛をエロチシズムと呼ぶか呼ばないかの問題じゃないか?
玉井 愛は違うんじゃないか?
大谷 うん、なるほど。
和田 ある種の関係……。
玉井 関係ですね。
和田 関係という言葉の中には、行きがかりということも含まれるけ?
大谷 うん、うー……。
和田 そうするとオレたちがエロチシズムを問題にして、それがなんなんだ。つまりね、さっき照り返しのこと言ったけど、例えばこの場が、急にムラムラっと怪しい雰囲気になってきて、そのまんまの成り行きでなんとなく全員の納得づくでこの中の誰か二人が性的行為におよんだとするよね。その場合、その過激なプロセスの移行に強烈な説得力があったら、最終的にはこの場の全員がその性的な照り返しを浴びて、紛れもなくエロチックな世界の共同体験が成り立つはずだとオレは思うけど、それは違うのか?
大谷 ふっふ。
寺田 別の角度からきましたね。
和田 いやいや、
瀬畑 そんなことないんじゃない?
和田 そう言ったらおしまいだよ。もしあったとしたら、少なくともそこに至るまでのプロセスと動機を含めて、この場を支配するある高揚感は……、
寺田 「愛とは違う」、ねえ。
和田 そう、愛とは違う、このエロチックな高揚感は、これはこの場の全員が共有できるはずだと思うけども、それはそう思っていいんだね?
瀬畑 うん。
和田 だからそれは何なのかってことを話したいわけだよ。つまり、いきなり非日常的な関係が始まるわけじゃないか、それはなかばグロテスクであり、タブーであり、恥ずかしいことであり、なおかつ恥ずかしいからこそ欲情したり興奮する問題であり、その両方のせめぎ合いでもって非日常のとびきりの瞬間てのがそこで始まるわけじゃない。この反社会的なしがらみの中で密かに成り立つ、濃密な関係というのは、あくまでもオレを高揚させるし、相手も高揚させるし、とびきりの体験だし、とびきりの時間さと思うんだよね。そういう空間というか時間がこの世にあって、あっちこっちにぼこぼことあったら素敵だなと。生まれてきてよかったなと思うわけだけど。それを女性に否定されたらちょっと淋しいね。それは行きがかりとか成り行きだけですよとか言われたらちょっと待ってくれよ、
瀬畑 そうじゃないけど……。
大谷 あのー、ちょっと違うかもしれないんですけども、その共有という部分で、芝居と絡めて話すと、何年か前に、「閉まらぬカーテン」ってやったじゃないですか。そのとき、香川さんとやったときに、面白かったって何回かボク、公の場で言っているんですけれども、それじゃあ何が面白かったのかって言うと、そのときに香川さんと関係が取れたのか、演じている香川さんと関係が取れたのかわからないんですけれど、たぶん、相当エロチックな関係が取れたんじゃないかなって、今、話聞いていてチラッと思ったんですけれど。それはべつに、変な、下世話な意味じゃなく。(笑)
香川 たしかに、あたしも、なんか、恋愛関係のような気持ちはあったんですよ、うん。エロチックっていうのとは、ちょっと……わかんないけれども……、まあ近いかな……。
大谷 なんか、それ、すごい面白かった記憶があって。
和田 そのとき、下世話なのも除かないでほしいな、入れておいてほしい。
大谷 あっ、じゃあ下世話も入れて。むしろ九割方、下世話で。
一同 (笑)
大谷 とにかくね、すごい、ボク芝居、そんなに長くやってないけれども、芝居が面白いと思えたひとつのきっかけであると言うか、相手と……、絡むって言ったら変ですけれども、べつにどこからセリフ言ったって許されるというか、まあ、芝居と結びつけると、あの、照り返しと言うか、関係と言うか、その辺でのキーワードで結びつけると、近いのかなーっていう気はするんですけれどね。そんな体験って、本当にしたことがなかったんで。
香川 でも……、そうなんですけれども、それはお互いに直接的な言葉がないぶん、余計そうだったんだと思うんですよね。だから、それ(直接的な言葉)があったら、「ない!」(笑)と思うんですよね。だから、エロチックっていうのと、さっきのセックスとかとはまったく違うのかなって思うんですけれどね。
和田 性そのものの中に、エロチックなものっていうのはないと思う?
香川 ないとは言えないんですけれども、実際の行為が入ってくると違うものになっちゃうんじゃないかなって。
和田 はあ、はあ。
寺田 実際の行為っていうのは、セックス?
和田 うん。違うものっていうのはどういうこと?
大谷 それは、古口くんがさっき言っていたことと同じようなことですよね。
和田 ある種、わずわしさか? なんだ?
香川 現実が入ってくると違うのかもしれないなって。
大谷 うん、そのオブラートだけなんじゃないですか? 要は玉井さんが言ったようなね。
和田 はー! オブラートの中身は「セックスという非現実」じゃなくて「セックスという現実」なんだ!
大谷 うん。で、思い返してみると、だから「閉まらぬカーテン」って面白かったのかなって、オレが唯一女性的になれたのかなーっていう……。(笑)
寺田 要するにプロセスなわけでしょ?
香川 うん、プロセスとそこへ行かない、っていうところの……、
寺田 行かないってことは前提にあってもなくてもどっちでもいいってこと?
大谷 そ、そ、それは射精するってことですか?
寺田 いやいや、要するにセックスね。
玉井 あーー。
香川 行きそうなんだけども行かない……。
和田 バルチック艦隊だ。
香川 こう……、なんて言うのかな……
玉井 あー、そうかもしれない。
寺田 行かなくてもいいってことでしょ? 要するに。
玉井 そうそう、その方がエロスは感じるかもしれない。
寺田 そうでしょ? いや、それは男もそうだよね?
和田 いやいや。
一同 (笑)
大谷 行きたい?(笑)
玉井 最後の行為まで至ってしまうと、ちょっとまた違うジャンルに、
寺田 あ、行った段階でまた違うものに変わっていくってこと?
玉井 うーん、そういう感じは、する、かな……。
寺田 要するに行くまでと、そのセックスに絡み入ってしまうのとはちょっとまたべつだ、っていうふうに考えない?
和田 オレはね、セックスっていうのは、もっと暴力的なものだっていう気がするんだよね。つまり香川さんが今言ったみたいな危惧をする、非日常が入ってきてしまう鬱陶しささえも巻き込んで、奔流の中に巻き込まれるような、暴力的なものだっていう気がするんだよね。本当のエロチズムっていうのは。それは、あらゆる犠牲も含めて、破滅も含めて、生活をめちゃくちゃにするみたいなものも含めて、鬱陶しいどころじゃない、枷(かせ)としての現実もぶっ飛ばして、本当に破産しちゃうみたいな、スッテンテンにつかい果たすみたいなものも含む、暴力的な嵐の真っ只中みたいなものが、エロチズムには本来あるんだっていう気がするんだよね。
香川 あたしは分からないですけど、そこまで行ける女性がいるのかなって……。
玉井 まあ、中にはいるかもね。
香川 いる、かもしれない。
大谷 それはわりと、男の目なのかもしれないですね。今までの女性の話を聞いていると。
和田 つまり、香川さんや亜子の話してる、性というのは、日常から非日常にバーンとひっくり返る、離陸する葛藤と言うか、嵐みたいなものではなく、日常生活の中で、その日常生活をほんの少し鬱陶しいものにしかねない、やっかいな、駄々っ子みたなものだよな。性体験を持っちゃうってことは。
大谷 それはやっぱり、女性は離陸、九割方しないっていう……、離陸しないのかなー? って思ったんですけどね、地に着いて。離陸するのは男の幻想とかそういうのなのかなって思ったんですけれど。
和田 なんか、そうじゃないところに少なくとも本来のエロチズムがあるはずだっていうところからどうしても考えたくなっちゃうんだけど。でも、スゲーしんどい現実にぶち当たったことは確かだね、今の後半の話でね。
瀬畑 あたしはね、周さん(和田)ともう二十五年一緒にいるけど、セックスの最中に「愛してる」って言葉をずっと聞いてたんだけど、あたしは「愛してる」って言葉をまず言わなかった。本人は気がついてないと思うけど。二十年近く、「好きだ」ってよく言ったけど、「愛してる」っていう言葉は出なかったのよね。そうねぇ、今から六、七年くらい前からもう普通に、セックスしていないときも、「愛してる、愛してる」って言っているんだけど(笑)、今は。それまでは、その言葉はね、すごく使えなかった。
大谷 ああ、瀬畑さんが?
瀬畑 そう、その最中に「愛してる」っていう言葉は聞いているんだけれども、それに対しては「大好き、大好き」っていうのは言っていたけれども、「愛してる」って言葉はね、……なんか、ウソっぽいって言うか、なんか自分で使えなかったの。
香川 うん、わかります、それ。そう、言っている自分が冷静になっちゃうんですよね。
瀬畑 あたしも何でそれが言えなかったのか自分でわかんないんだけども、でも、言えない自分は気がついていたのよ、ずーっと。
大谷 そこで、希望としては、言って、溺れてほしいっていうのがありますよね。
玉井 言ったら逆に冷めちゃうんだよ。
大谷 言いながら溺れてくれよ。
一同 (笑)
大谷 ない?
玉井 なんかね、言っている自分が滑稽に思えちゃうような気がする。
大谷 そこで溺れてくれよ、って思うんだけどね。
瀬畑 ウソって言うとまた違うんだけれど、虚構……なんて言うんだろ、そこへ行っちゃうような気がしてイヤなのよ、あたしは。
香川 芝居しているみたいな感じ?
瀬畑 うん、「愛してる」ていう言葉自体が……、
瀬畑 冷めるって言うか、自分が。だから言えなかったのよ、ずーっと。
大谷 だけど、言ってみることで……、
一同 (笑)
大谷 溺れられることってありますよ! ホントに!
瀬畑 それは、言わなくても溺れているんだけど!
一同 (笑)
大谷 言葉ひとつで溺れるって、すごいできますからね。特にオレ、女性はそうじゃないかなって気がするんですけど。
瀬畑 いや、言われて溺れるはあっても、言って溺れるはないでしょう。
大谷 あー……、そっか……。(和田に)そうなんですか?
和田 ……。
一同 (笑)
大谷 あっ! それは、オナニーと関係あるかもしれないですね。自分が言うことによって自分が溺れながらお互い溺れていくというか。
瀬畑 ちょっと話が違ってきたような気が。
大谷 ああ、違いますか。……じゃあボクも沈黙……。
一同 (笑)
2004.4