ライブ「演劇論」

第2回「稽古について」

大谷 エー、第二回の座談会を始めたいと思います。今回のテーマは「稽古について」。
寺田 稽古?
大谷 うん。
和田 今回の稽古。
大谷 今回の稽古?
和田 うん、稽古一般じゃなくて、今やっている稽古の中で出てきたことを話そうよ。
大谷 あ、「一般的」じゃなく・・・そうか、でも、なんで?
和田 今回の稽古の座談会して、次に、今回の「本番」のをその後にやりたい、つまり本番一般について話してもつまらないし、だから、一本の芝居の稽古の過程で出てきたことと、本番が終ってから出てきたことを話た方が、面白いんじゃないかと。
大谷 その中でいろいろと今回からはみ出してくることが出てくると思うんですけどね。
和田 もちろん。

今日の稽古は面白かった

大谷 じゃ、いきましょう。古口くん、こないだ「今日の稽古は面白かった」って喜んでいたよね。
古口 あの日は、稽古場で立ってる役者たち同士が、次々にね、「これはいい」と思える工夫に飛びついて、それを重ねながら、その場がどんどんできあがっていくというスタイルというか、創り方が、あまり今までなかったんじゃないかっていう気がしてて、自分もああいう風にやれたらいいなって思いながら見てたんだけど。
和田 役者同士でそのときに思いついたことを言って、それをまた「違うよ」って言って、それをまたひっくり返していって、っていう感じだったよね。
古口 当然観ている人もそこに参加して、観ている側の意見もそのときあれば理想的かなと思ったんですけど、あの日は、見ている側が何も言わなくても、やっている人たちでどんどんどんどん良くなっていくんで、観ている側の意見っていうのは別に言う必要もなかったし・・・。
和田 2幕の大谷と寺田と俺で、田部(死んだ男)を担ぎ入れるところだよな。
大谷 うん。
古口 一番印象的だったのが、最初に和田さんが出した意見があっけなく他の人の意見に変わって、和田さんもそれに乗って、乗ってやったんだけどまた次の人が違う意見を言って、また他の人たちもその意見に乗って、どんどんできていくっていう・・・、あれは観ていてすごい新鮮で、自分もああやりたいなって思える稽古だったんですけどね。なかなか上手くそうしょっちゅういくものではないと思うんですけどね。
大谷 たしか、あの担ぎ入れるところっていうのは、わりと見た目勝負というか、動きがわりと多いよね。動きの問題で「どうしよいか」って皆でワイワイやったんだ。
和田 そうだったね。あのときはさ、二つのことを一緒に、つまり、普段だったら「役者としてこう動きたい」っていうのと、「客席で見てる方としてはこう動いて欲しい」っていう工夫を演ってる三人で「ああでもない、こうでもない」って言いながら創っていったよね。
寺田 そう。
和田 いつも思うんだけど、演出家が全部決めてそれを役者に言っていくやり方だと、たったひとりの感性で、才能で、芝居を創るわけじゃない? それを役者みんながこっち側(創る側)にいくと、4人の役者がいたら4人の感性で創れるわけだし、感性の「ポリフォニー」みたいな、4人の役者なら4人の役者の感性が重なって芝居ができる、そうなったら理想的な芝居だよね。俺、演出家嫌いだからさ、夜の樹の場合、役者だけでそこまでできたらね。役者って舞台に立つとどうしても自分のこと見えなくなるからって言うんで演出家に任しちゃうけれども、今言ったみたいなことができるようになったらしめたものだよね。
大谷 創っていても面白かったんだよね、あそこは。どんどんどんどん「あぁ、きっとこうやったら楽しい」っていう・・・。
玉井 そういう視覚的なシーンだと観た感じがわかりやすいじゃないですか、観ている方も。だから言いやすいっていうのがあるんですけれど、セリフ勝負みたいなシーンだと難しいですよね?
大谷 ああ。俺も気になったんだけど、そこをどうやって乗り越えて・・・、乗り越えるって言ったらヘンだけれど。

セリフで責任とらない

和田 セリフ勝負で言うと、俺、今回の稽古で一番面白かったのは、前田(1幕の介護士)が「ゴメンね」って言って顔を出すところ。前田は声優の学校に行ってたりするせいもあって、セリフを大事にするじゃないか。最初のうちはセリフだけで芝居を担って、というか自分のセリフだけで責任とろうとしてやっていたよね。で、「そうじゃないよ」って言ったんだよ。「舞台に最初に現れた瞬間、顔を出した瞬間に、その時の顔が、それまでに登場している人物(サザエとカツオ)の二人にどんな影響を与えるか。セリフじゃないセリフ以前の「顔を出す」ということ自身が登場人物にどういう影響を与えるかということと同時に、それが客席から観て、その効果が、どう芝居の運びに関わるかという、さっきの二重の問題もひっくるめて、セリフ以前の、役者がただそこに現れるという「出来事」から芝居を創っていこうよ」って言ったときに、前田の芝居がガラっと変わったよな?
大谷 ええ、ええ。
和田 あれは嬉しかったよね。
大谷 (前田に)あのときどうだった?
和田 食べている場合じゃないぞ!
一同 (笑)
            前田、食べている焼きうどんを没収される。
大谷 増子さん、食べなさい、残りは。(焼きうどんは増子の手へ)
前田 いや、あの。。。なんか、それまでは言葉を相手に言うって感じだったんですよ。
大谷 そりゃそうだよな、言葉を言っているんだからな。(笑)
前田 ・・・自分の動きが相手に影響するっていうのは全然頭になかったんですよ。だからちゃんと言葉を伝えられたらって、そればっかりでいたから、「ああこういうのもあるんだー」って思って面白くなった・・・また新しい面白さっていうか、「あぁー」っていうのがありました。
和田 たまたまさ、この前の「笑い」の座談会とも繋がりがあるんだけれども、例のベルグソンがさ、石と宇宙が関係を取り合うっていう、あれと似ているんだよね。役者がただセリフ言うってことだけじゃなくて、いる(存在する)こと自身が周りにどういう影響を与え合って関係が成り立つかっていう・・・、ちょっと似ている問題だからさ。俺たちが稽古の過程でそれに気が付くっていうのはすごい財産っていうか、あのときは俺、嬉しかったけどね、みんなで「しめた!」っていうのを共有したと思うんだよね、休んでいたやつはバカだった。
玉井 あたし休んでいたかも…。
大谷 バカだ、バカだ!
瀬畑 もう二度とできないよ。
大谷 あのときは本当に面白かったですよ。
和田 古口いたっけ? あのとき。
古口 いなかったです。
大谷・玉井 あ、バカだ。
大谷 力がね、スーと抜けていって・・・、いつもだと前田くんのクセで、息遣いで、埋めていたのが、ピューとなくなったときがすごいよかったんだよね。そうじゃないときは全部自分でこう、言葉で埋めていたから。
和田 前田だけの問題じゃないんだよな。言いながら俺たちもそうだってことに気が付いた意味でも、あのときの稽古はすごい楽しかったんだよね。
前田 感覚がそれまでやっていたのと全然ガラって変わって、すごい面白かったんです。
和田 舞台にいること自身が、芝居だからね。ということはセリフの多い少ないじゃなくて、いることで関係をとるってことで、芝居が成り立つってことがね。
玉井 私は、舞台に立っているだけで成り立つという発想は、夜の樹に来るまでなかったんですよ。
和田 ああ、そうか?
玉井 やっぱり、埋めなきゃっていうのがあったんで。
大谷 和田さんの包丁を探しているときみたいに(一同、笑)ぎっちり埋めて?
一同 (笑)
玉井 そうそう。(笑)いるだけでいいんだって思ったのは、ちょっと新鮮でしたけどね。
和田 いるってことはすごい大事なことだからね。舞台っていう限られた空間に、その人物が登場するかしないかだけだもん。登場するってことは新たに登場するわけだもんね、それから退場するってことはいなくなるわけだし、そのアクセントが舞台全体に与える影響っていうのはすごいよね。いることそのものがね。二人の登場人物のなかにもうひとり入るってことはガラッと関係が変わるわけだもんね。
大谷 前田くんは他所の芝居観に行ったりする?
前田 あんまりないですけど、たまに。
玉井 舞台を一番観ているのは、香川さんですよね?
香川 そんなことないよ。私は・・・、あまりいいものは観ていないかもしれない・・・。
大谷 でも、あたるときも・・・、「アタリー」っていうのは?
香川 アタリは・・・、ほとんどない。
玉井 ありゃりゃりゃりゃ。
香川 いままででたぶん、…3本くらいだよ。(笑)もったいないなー、っていうのはかなりあるの。
玉井 それでも観続けるからすごいですよ。
香川 ・・・なんかあるかもしれないって思うし。
大谷 期待はけっこうありますよね。もしかしたら、もしかしたらって言ったら失礼かもしれないけど、なんか面白いかもしれない。
香川 うん。でもどういうところに期待するかっていうので違ってくると思うんですけれど、見た目の派手さとか笑いだけを期待して行くときもあるわけだし、そういうときにはけっこうハズレはなかったりするんですけれど。う〜ん、夜の樹みたいなことを求めているところ(劇団)はたぶん、ないんじゃないかな、私が観た中には。
和田 戯曲集のあとがきで書いたことは、嘘じゃないと思うんだよね。実際稽古で、毎回発見があるじゃない。やればやるほど面白くなっていくというか、新しいことに気が付くのは集団としてのっている証拠だよね。

「読み」と「立ち」のギャップ

瀬畑 それと、読み稽古と立ち稽古は違ってくるじゃない? だけど読み稽古をあれだけやっているから変われるんだけど、全然違うものだよね、読みの稽古と立ちの稽古っていうのは。
和田 たぶんね、さっき前田の話しで「ああそうか」って思ったんだけど、セリフ以前にいること自身が大きな意味を持つっていうのは、読みでお互いにそのことをアタマで想像するのと実際に現場で現われてその影響をみんなで確かめて新しく創るっていうのは、まるっきり違うからね、それが読みと立ちの違いの一番大きなところだと思うんだ。目の当たりにするわけだから「登場する」ってことを。アタマの中でト書き通り、「登場ね、じゃあこのセリフ言いましょう」っていうのと違うからね。
玉井 登場しただけで空気が変わるっていうのは、憧れというか…。
和田 それで絶対に埋めたいね。それを逃したくないというか、せっかくのそれ(空気の変化)をないことにして先に行っちゃうっていうのは、テーマで、筋だけで先に行っちゃうっていうのは、絶対に嫌だよね。
瀬畑 それと失敗をするのは、読みの稽古でこの役の人物はこういうタイプの人でとかいろいろ自分で演技プランたてるじゃない? 勝手にイメージふくらませて。それが立ちになると、そのイメージとはすごっく違った自分が素顔で登場するわけじゃない? 相手もそうだしさ。そうすると読みとのギャップがメチャクチャ出てきちゃう。
和田 そうなんだよ。読みのときには「俺はこのイメージでやろう」って思うじゃないか。で、期待ふくらませてさ、テメェじゃそのガラじゃないのにこのイメージで行こうと思って。実際やったときにハズレタときのあの寂しさというか、そのメゲから立ち直るのに立ち稽古の最初っていうのは費やすんだよね。ツライ。
玉井 こんなはずじゃなかった!(笑)
和田 そこでめげずにそのリアリティから創っていってだんだん本当のものに。
玉井 じゃあ、ゼロからのスタートじゃなくてマイナイスからスタートですねもう。
和田 何のための読み稽古だ!(笑)でも結局はそこで憧れじゃなくてリアルに「ああ俺はこういうかたちでここに関わっているんだな」っていうのがもうひとつの目で見えるようになってきて、それからだんだん修正していって舞台上のリアルが手に入るものなんだろうね。その間、10日くらいは・・・、
瀬畑 もうスカスカでさ、自分がもう嫌じゃない?
大谷 でも、やる度に新しいことをみつけるっていうのは面白いよね。
玉井 完成がないぶん、ツラさもありつつ・・・。
和田 すごい贅沢なことだよ。
玉井 贅沢ですよね。絶対も正解もないんですけれど、でもそうなると、どの状態でお客さんに観せるかってっていうのが・・・。
和田 屋根がないっていうのはいいことだよね。屋根なしの吹き抜け。(笑)
玉井 今日が本番だったらいいのにって思うときってありますよね。

昨日正解、今日はウソ

大谷 あるある。・・・話しは戻って、稽古場で、人の演技にみんなで注文する機会が多いじゃないですか。そのときに一番思うのが、例えば「いまのだったらここはこうで、右手はこの辺がいいけど」って感じで、「じゃあ右手をこの辺にしていまの感じでやって」って言って、次やってもらうとそのときは「右手はここじゃなくてこっちの方がいい」っていうのがあるじゃないですか。そのへんの伝え方っていうのが・・・。
瀬畑 それは、昨日の芝居にはこうで、今日の芝居だったらこっちの方がいいってことでしょ?
大谷 ええ、ええ。やっている方と見ている方との兼ね合いがそこで合ってこないと難しいというか。
和田 役者としちゃあすごく不安だから、早く段取り決めて動きもこう決めて安心したいっていうのがあるけども、逆に恐くてもそれをゆるくだらしなく、そのときのリアリティで動いていいんだっていう幅を持たしておいた方が面白くなるはずだよね。
大谷 だから今回(の稽古)は「いまのだったらこっちの方がいい」と言うように努めているんですけれども、それがなかなか伝わらないというか…。
和田 そうなんだよ。いまのは大事なことでさ、いまのだったらこれがいいんだよね。これが絶対正しい動きだよというふうに思っちゃダメだなんだよ。逆に言うと、例えば古口なら古口が創るだろ? それにプラス「こうしてくれよ」って俺が頼むよな。その次の日は、古口が違うことをやったときに、俺のなかでは言葉では言わないけれど「だったら」っていう前提があって、その古口が新しく創ってくれたものの上にのっけて「こう変えてくれよ」って言うんだけれども、ヘタすると前と違うことを要求されたっていうふうに・・・。(笑)いままでずいぶん(そういうことが)あったよね。このごろは皆あたりまえになってきたけど。
玉井 最初の頃は、「え、だってこの前こう言ったじゃーん」って、
大谷 「180度違うじゃーん」って。
玉井 そう思ったけど、最近はそういうものだってわかってきたから、台本に(動きを)書かなくなりましたね。
一同 (笑)
香川 そうだね。
和田 これはわりと大事なことだと思うんだよね。つまりリアリティっていうのは、その日のその場の瞬間の芝居にリアリティがあるわけだから、それにどう延ばしていくか、接ぎ木していくかっていうのはその日の問題だよね。かたちの問題じゃないよね。
大谷 そこの辺を一度みんなと話してみたいなと思っていたんですよね。
香川 でもね、それでもどこかに頼りたくなって、それをやっちゃうことがあるんですよね。
和田 役者一人ひとりにとっちゃあ、不安なんだもんな。なんとかすがりつきたいっていうのがあるからね。
大谷 特に今回の香川さんの車椅子の場面って、そういう部分が大きいと思うんですよね。
香川 さっき出た前田くんの(稽古の)日だったかなぁ、あたしすごいラクにできたっていうのがあって、あのときの感覚をなんとか取り戻したいと考えて…、
玉井 あー、でもそれ考えるといけないんですよね。
香川 そう。そうするとこの前の(稽古)みたいなことになっちゃうんですよ。
瀬畑 それ、みんなありますよ。
香川 でもそうでなくて、どうしたらあの場にいられるのかなっていう・・・。
玉井 なんとかあのときのことを再現しようと思うと、どんどんドツボにハマっていくんですよね。
和田 だからね、つくづくさっきの前田の言った問題が俺たちにも大事で、そのときの自分の居方そのものが、その場なり客席にどういう影響を与えるかとか、どういう力を及ぼすかということを、感性を、毛穴を広げて吸収するというか、そこからいつも創っていくと、新鮮に芝居ができると思うんだけれど、どうしてもアタマでさ、こうすればいいんだという・・・、
瀬畑 前の日の稽古を探っちゃうのよ、あたしもそう。
和田 「いま」っていう肉体感覚がやったらいいはずものを肉体感覚じゃなくてアタマで創っちゃうと絶対失敗するよね。
香川 その「いま」っていう感覚を求めるため、さらに「あのときどうだったかな」って考えちゃうんですよ。
瀬畑 だからアタマが二つになちゃうんだよね。やってる自分と思い出す自分とね。
香川 ここから抜け出すにはどうしたらいいのかと思って。さっき、(にしだ)まちこさんともチラッと話していたんですけれど、和田さんからいろいろなことを言われて、混乱した状態で何もかも放り出した状態でいった方がなれるのかもしれないなって、わたしは言ったんですけれど・・・。聞いた言葉は身体にどこかに残っているわけじゃないですか、で自分でアタマで考えた途端ごちゃごちゃになっててわかんなくなっているので・・・。実際どうしたらいいのかわからないんですけれど、・・・、どうしようってことを考えない。
和田 いや、難しい問題だよね。最終的には芝居っていうのはその個人の役者のコントロールの結果、出てくるもののはずだよね。コントロールって言うとすごい冷静な状態みたいだけれども、そうじゃなくて、ものすごく皮膚感覚を外に最大限に開きながら感じたものと、そこからインプットとアウトプットをコントロールするときっていうのは、いくらだって感情的になったり激した冷静じゃない場面でも、コントロールっていうのはあるはずだし、そのへんが難しいところで、ただ混乱してっていうのと違うと思うんだよね。そこがわかりゃ、文句ないんだけども。寺田、なんかそのあたりでチョット言ってくれよ。
寺田 お腹が一杯になったら。(黙々と食べている)

恋と銭勘定

大谷 ちょっと悪い言い方をすれば「企む」みたいなところがあるじゃないですか、まったく企まないで・・・、
香川 まったく企まないでは、セリフは言えませんよ。
大谷 そうですよね、無理ですよね。ということはニュートラルというのは難しい、難しいというか無理なわけですよね。
和田 例のパブロフの犬みたいに、条件反射だけでニュートラルにっていう演技メソードは嘘だからね。
大谷 そうすると皮膚感覚ってわりとニュートラルに近い感覚じゃないですか。僕もそのへんはギリギリだと思うんですよ。(毛穴を)開くけれどその現場で起きていることだけに開いているんじゃなくて、それ以外のものにもちょっと開いているわけじゃないですか。例えば舞台に立っていることにも開いてたりとか見られていることに対しても開いてたりとか。例えば和田さんと俺がふたりで芝居してそこだけに開いているんじゃなくて、やっぱり微妙に日常生活とは違う開きが皮膚感覚というか・・・。
和田 つまり劇場に行くとね、劇場の客席も含めたあの空間全部に対して開いて芝居するよな? だから稽古場でも見てくれる人がいないと稽古をしたくないのは、それを含めてのこっちの開き方で・・・。さっきのベルグソンの石と宇宙との関係じゃないけれど、役者が石だとしたら劇場が宇宙として、石と宇宙との関係で自分の存在が決まるし関係もできるという、この方法っていうのは劇場だったら相手役も含めて客席も含めて劇場丸ごとの自分の位置、というふうになるわけだから、そこでの開き方はスタニスラフスキーが言うような、お互いの関係に集中して劇の中に没頭するということじゃないよね。
瀬畑 ただね、「できた」って思った次のときの稽古って、どうしても思い出そうとしている自分がいるの。それでね、あたしはいま「あたし本当にバカになったな」って思うんだけれど、ものすごく忘れる、まあ年齢的なものもあって日々のこともちょっといま忙しすぎるっていうのがあって、なんでこんなに忘れるようになったのかなっていう自分もいるんだけど、稽古もね、なんかね思い出そうとしてやっているみたいなの。
和田 段取りとかさ、思い出そうナゾロウっていうのは、それからちょっとでもうまくやりたいっていうのはさ、例えで言うと恋愛しているときに銭勘定をどこかでしているのと同じだよな。(笑)そっちにもどうしてもアタマがいくわけだからさ、「ここはこういう風に言いたい」とかさ、「こういう風に見えたい」とか「この前あれで褒められたからそれでいこうか」みたいな、全部銭勘定的な神経が、それとは別に「もっと純粋に劇の中に没頭して」みたいなのと二重にあるわけじゃない、両方あるよね、「私は一本やりです」っていうのは嘘だと思うんだよね。
大谷 今日の稽古でも「あ、あそこで立つんだった」っていう風に計算というか、している部分ってあるじゃないですか。香川さんともチョット話したんですけれど、面白かったときっていうのは全然没頭していないというか、だけど没頭しているというか・・・、このトーンっていうんじゃなくってどのトーンでいってもきっと相手も・・・。
瀬畑 関係だけがピッタリいっているっていうフィット感があるんだよね。
大谷 そうそう。
瀬畑 それを思い出そうとしている自分がいると思うともうダメなのよ。
玉井 客観性と没頭している部分とバランスがうまくいっているとき。
和田 両方だよね。恋愛と銭勘定と両方やっている。
玉井 どっちかが強くなってもうまくいかなくて、そのバランスがうまくいくときがときどきあって、そういうときは「ああ、なんかいいな」と。
和田 で、たぶんそれは正確なんだよね、本人がいいと思ったときはこっち(見ている方)にもそれで「いけてるな」って受け取れるしね。
大谷 気持ちだけでいいと思っていると、けっこう和田さんに「いやこれチョット違う」って言われる場合もありますよね。(笑)そのときは「俺、相手だけしか見ていなかったんだな」って思って、こっちが全然角度が20度くらいで見てて、45度くらいに開いてなかったんだなって・・・。という部分はありますよね。
大谷 増子さんはどう? 今回の銭勘定と…、
和田 例えが良くなかった。(笑)
大谷 いまちょうど、銭勘定なんかまだないと思うけど。
増子 へへへ。あたしが面白いと思うのが、自分が登場する「粗茶ですけど」のところがあるじゃないですか。わたしは出ていってお茶を出して「粗茶ですけど」って言ってはけるじゃないですか。そのひとことを言いに出てはけただけでその後、わたしの関係とか面白い感じに広がっていくじゃないですか。やりとりしていて「わたしはこうだ」って思ったり、「いまイケテル」って思ったりっていうのはこの場ではないですけど、わたしが出た意味っていうのがそのひと言だけでも創られるじゃないですか。そういうところがすごい面白いなって思って。
和田 つまり増子さんの出方次第でこっちの芝居が、そのことから、池に石投げたみたいな、そこから広がっていくわけだからね。
玉井 またチラリズムだからいいんだよね。
一同 (笑)
増子 自分の中ではそういうのも、すごいオイシイかな、と。
和田 いまの面白いよね。いるときのさっきの前田の問題だけじゃなくて、引っ込んでもその影響が余韻としてというか関係としてね。
瀬畑 実際には見えていないけれども、観ているお客にはずっとあの「粗茶ですけど」って出したあなたがそこにいるわけだからね。

「夜の樹」の稽古って

和田 沢田さん、初めて観ててくれてなんか、どうですか?
大谷 夜の樹をずっと観てくれているけど、稽古に(音響オペレータとして)参加してくれたのは初めてだよね。
沢田 ええ。初めて稽古を・・・。
和田 どんな印象ですか?
沢田 印象はですね、想像とまるで違いました。けっこう一つひとつ、綿密にというか、けっこうちゃんと・・・。もっとアバウトに創っていると思っていました。
和田 あー、そうか。
沢田 結構、和田さんとか、他のみんなが「これだと嘘かなぁー」とか「嘘になっちゃかなぁー」とかよく言わないですか?
和田 ん、ん
沢田 何て言うだろ・・・。嘘にならないように、これほど綿密に芝居を創っているとは思わなかったですねー。
和田 あーそうか、創りごとは創りごととして、割り切って創っていると思ったの?
沢田 いや、今まで「夜の樹」を観ていて、自分で鼻に付くと言うか、わざとらしいというか、「これは嘘だろー」みたいなのってあんまり感じたことがなかったんですけどね。
和田 稽古観てると、普通のことを普通に演ろうとしているだけでしょ、芝居を創るっていういのは。
沢田 えー。でも決して普段通りに、真似て芝居をしているわけではないというか、それでは人に伝わらないというか、表現できないというか、芝居で人に観せるというのは、だいぶ違うことなんだなと思いました。
和田 あー、それはあるかもしれないな、俺の芝居、いきなりテンション上ったり、話がすりかわったり、演っていることはわりとぶっ飛んでるからね。
沢田 ははは。
瀬畑 そうなんだよね、ナチュラルな芝居に憧れているけど、芝居そのものはめちゃくちゃナチュラルじゃもんね、芝居って。
和田・大谷 ん。
和田 そうねー、舞台でどう成り立つか成り立たないっていうのは、娑婆でのできごとの辻褄が合うか合わないかとは違う問題だもんな。確かに。
大谷 古口くんはどうなの?
古口 え?
大谷 まだ何も言っていないんだけど・・・。
玉井 聞いてた?
一同 (笑)

カチーンとくる

大谷 人から言われるのはどうなの? 人から言われるっていうのは変だけど、一緒にやってる役者から。
古口 あー、自分が稽古してて、人からダメだしされることですか?
大谷 俺、今回の芝居ではかなり言ってるかもしれないんだけど。
古口 ハッキリ言っていい気分はしないですね。
一同 (笑)
大谷 怒ってるんか?
古口 間違いなくいい気分はしないですね。ただ、自分はこう演じたい、ということがいくらあっても、稽古の最中は観ている側の方が「正しいなぁ」、というのは自分の中にもありますけど。
大谷 カチーンときても?
古口 えー、それは勿論そうですよ。
玉井 ははは、今の戦線布告だったよ。
古口 でもそれぐらいないとやっぱり。
玉井 それだけ自信を持って稽古に臨んでいるということだよね。
古口 そうそう、稽古やるときは自分はこれでいいんだと思ってやっているわけで。ダメダシされると「えー、なんでこれじゃダメなの?」っていうのはありますよね。
玉井 気合い入れて稽古するときほど、ダメだし多くてガクッときますよね。
大谷 そうそう、さっきの細くなっちゃってる部分があるんだろうね。
古口 だから、自分で、その役を演っているのって自分じゃないですか、その役を飲んで、その役を担って、その役の人を責任持って演ってるわけだから、自分では「これでいいんだ」と思って演っても、観ている側にはそうは見えないわけですよね。
大谷 そうだよ。
古口 「俺はちゃんとやっているンだよ!」っいう。
一同 (笑)
大谷 「ちゃんとやっていない」と言っているわけじゃないんだけど・・・。
古口 という意味では「カチン」ときますよ、だけど観ている側がそう言うから間違いないなとは思いますけど。
瀬畑 つまり、「そう見えているんだ」って。自分が「こう」演ったら「こう見えるだろう」っていうのが、じつは「こう見えていたんだ」ってことだよね。
古口 そうです。まぁ、我には返ります。で、まぁ、そこからどうしようかなってことですよね。
大谷 だけど自分の芝居はゆずらないんだろ?
古口 ゆずりますよー!
一同 (笑)
古口 全部はゆずらないけど、
玉井 全部はゆずらない!
古口 ただそれはもう、ゆずるところはゆずって、ゆずらないところはゆずらない。
和田 言葉の意味でちょうど半々なんだよな。発しているのは古口だけど、受け取っているのは俺だからね。両方とも、こっちから観ると「来ないものは受け取れないんだ」で、反対側から観ると「俺は出しているんだ! 届かないだろうけど、俺は出しているんだ!」
玉井 「受け取らない方が悪い!」
和田 それは両方、我を張ってワーワー喧嘩していいと思うんだ。「受け取れないよ!」っていうのと「出したよ!」っていうのとで。
古口 自分が「何も出していない」ゼロのときに何かいわれると、100パーセント受け入れちゃう。
和田 「ゴメンナサイ」ってか、ハハ。
古口 何もしていないで稽古しているときに、何か言われると、素直に全部受け入れてしまって、次の稽古のときにそれを100パーセントやろうと思ってしまって。
玉井 以外と何も考えないで「ポワーン」て演っているときのほうが「良かったよ」とか言われると、「どうしよう?」なんて。逆に気合いいれて「よしこれだ!」なんて稽古すると「それ違う」とか言われて、「ホホホ」とかなっちゃう・・・。
和田 つまりさ、役者の場合、客席に座るとほぼ100パーセントその芝居が良いか悪いか分かるわけじゃない、理屈ぬきに。演出家は分からないけど、役者は分かるじゃない。(一同、笑)「来たか来ないか」100パーセント分かる。だけどその役者が舞台に立つと「それがそっちに届いているかいないか」っいうのが全く暗闇に向かって発信しているようなものだから、そのギャップていうのが、いまの古口の言った、立ってる側に固執したら「俺100パーセント出したぜ」になるけど、古口自身が客席に座って、舞台に立ってる俺に「ソレ来てない」って言えるわけだし。そのギャップを埋めながらっていうのが、「演出家」抜きの役者同士の稽古の永遠のテーマというかさぁ。そのギャップにそこで腹立てたりしたら勿体ないよな、それで食い違ったまんまで、なんか急に雰囲気悪くなったりして。
玉井 でも稽古場で、演っていないで観てる役者が、第三者のつもりで観ているつもりなンだけれども、やっぱり完全に第三者に成りきれないわけじゃないですか。そこら辺が難しいところですよね。お客の目には完全になれない。
和田 あー、そうか・・・。
玉井 私が「凄い面白いよ!」って思ったりしても、他の人が「それお客から観たら分かんないじゃないか」なんて言われると、「あー、確かにそうか」とか思うときがあって、「自分は第三者に成り切れてなくて観ていったんだなぁ〜」って思うときもあるし。
大谷 でも、そこにはそんなに溝はないんじゃない?
玉井 ありますよー!
大谷 あるかな?
和田 そこは意見が分かれるところだと思うよ。亜子(玉井)の言う意見に賛成っていうやつと、そうじゃないってやつもいると思うよ。
増子 私、その気持ち分かります。
玉井 大谷さんは意外と客観的に観れる方だと思いますよ。
大谷 いま、そうじゃないって。
玉井 だから、大谷さんはお客さんの方に寄ってると思いますよ。
大谷 俺、いま、逆のこと言ったんだけど。

わかって欲しい

玉井 大谷さんはよく「それじゃお客さん解らないんじゃない」というようなことを言うんですよ。
大谷 あー、それ、自分を保護する意味でね。
玉井 前提に「俺は良いと思うけど」みたいな感じで?
大谷 (笑)そうそうそう!
和田 亜子の場合の、客の立場に立てない場合の、自分ていうのはどの位置に居るわけ?
玉井 完全に創ってる側ですよ! 「客が分らなくても面白ければいいよ」みたいな、ごり押しな部分を持っちゃてるときかな。大谷さんとかが「それじゃお客分からないよ」って言うと、ハッと我に返る。
和田 なるほど、なるほど。俺も大谷に言われて「ハッ」とするよ。
大谷 ハハハ。
玉井 分かんなくてもいいよ! と思っちゃうことがあるんだけど。
大谷 ダメダメダメダメ! そこは絶対にお客さんに伝わらなくちゃ!
玉井 ダメですよね、ダメだと思う!
和田 イヤでもな、それは反対だよ! 分からない部分が、暗がりがあったほうが面白ってことあるからね! 人間の理解だって、その人を目の前にして、その人が完全に分かったつまらないからね、3割暗がりで、7割分かった方が魅力的だからね。
大谷 それとはまた、若干ニュアンスが違うンですけど。
玉井 もっと客観的な、アレですよね。
大谷 それは勿論、僕も和田さんの意見に意義はありませんけど。全て知りたいンだったら、脚本わたして「読んで」て言えば済むことですし。
和田 俺の脚本読んでもっと真っ暗闇になったりして。
一同 (笑)
玉井 お客さんが観て「なんか分かんないけど、しがみついちゃうような」不明点は全然オッケーなんですけど。「もー分かんない!」って投げ出されちゃうと・・・。
大谷 離れちゃうところね。
玉井 そう、離れちゃうところは絶対創りたくないから。
和田 ソレは夜の樹の苦い反省点。
大谷 瀬畑さんに前から「それじゃ逃がしちゃってるよ、あそこで逃がしちゃってるよ」といつも言われていて。よく瀬畑さんと全体の流れを話すんですけど。
和田 確かに逃がしているしな・・・。

ほめて欲しい

大谷 チョットもどるんですけど、さっきの和田さんと寺田さんと俺との3人での芝居のところで、古口がわりといろいろなことを言ってくれたんですよね、「古口くんちょっと観て悪いところ言ってくれよ」って頼んだときに。
古口 あーあー、そうでしたよね。
大谷 古口くんが「3人ともリアクションが同じですよ!」
和田 あーあー、思い出した。あれは鋭かったね。3人とも「ゴメン」ってなったもん。
大谷 あーいうの、もっと観てる側から言って欲しいンだよね、俺は「カチン」とこないタイプだから。
古口 別に言わなくても。
大谷 言われなくちゃ分かんねーよ!
古口 言わなくてもうまくいくときは、いくと思うンですよ。自分でも何か言わなくちゃなぁ〜とは思うんですけど、うまくいってるンですよ。そういうときは、言う必要が無いから、別に言わなくてもいいじゃないですか。
大谷 「今の芝居よかったよ〜」とかサァ。
古口 (笑いながら)そんなの言われたくないでしょ!
一同 (笑)
瀬畑 逆に「ムカッー」てするかも。
玉井 言い方次第だから。
古口 まぁ言わなくちゃなぁーとは、思うンですけど。
玉井 私なんか、言われ方次第で木にも登るし。
香川 私もおだてられた方がうれしい。
玉井 私はもう、ダメ出しされるとドンドンドンドン落ち込むし、誉められればドンドンドンドン上がっていくし。

二枚目

古口 俺は「今の芝居よかったよ」って言われると、次の稽古からソレをやりたくなくなっちゃうんですよ。
玉井 あー、天邪鬼!
古口 自分がヤダから、人にはどうしても言いづらくなってしまう。
玉井 じゃ古口さんにはこれからそれで。
和田 いゃー、やっぱりアレだね、古口っていうのはちょっと特種だね。
大谷 頑固なんですよ以外と。
和田 つくづく、俺なんか一般的でおめでたいんだなぁ〜。
玉井 私もおめでたいー。
大谷 俺もおめでたいなー。
和田 誉められると、照れながらも「そーかなー」なんて納得したりして。
古口 少数でもいると思うんですよね。なんか「いい」なんて言われると次からやりたくなくなっちゃうんですよ。
玉井 ソレはMだね!
和田 俺なんか、普段の生き方でも「人様のお役にたつ」とうれしくて、いっぺんに軽薄になったりして。古口とはそういう意味では違うんだね、キャラクターって、やっぱり違うんだ。
大谷 古口くんはいつでも、疑ってんだね。
玉井 なんか冷たい言い方。
古口 何か言おうとすると、「いいね〜」っていうのと反対のことしか自分でも言わないような気がして。
和田 天性の二枚目なんだな〜。
玉井 天性の二枚目だって。
古口 なんだか分からないけど。
玉井 鏡を見て自分にウットリと体を洗う。
一同 (笑)
大谷 なんか薄っぺらい天性の二枚目だなぁ〜。
和田 ソレは天性じゃないよ。
増子 ナルシスト。
和田 寺田、何か言ってくれよ。
玉井 二枚目勝負!
大谷 よし! 俺も挑戦状叩き付けるぞ。俺も二枚目勝負に参戦!
玉井 オイオイ。
和田 今回の稽古で今までの稽古と違うところない?
寺田 別にない・・・。
和田 そっか。
大谷 いつも通り?
寺田 いつも通りだよね。特に変わったことはない。しいて言うならば稽古が少ない感じがします。

稽古不足

和田 稽古が少ないと思うのはね、演るたびに演ることが増えてくるからだよね。前にも話したけど、絵描き修行のデッサンと同じだよね。
大谷 もう少し分かりやすく説明してください。
和田 デッサンの場合だと、最初、石膏デッサンっていって木炭で描く、結構複雑なラオコーンとかのトルソー(上半身像)とかを描くんだけど、最初、美術部に入って最初の1週間っていうのは、1時間くらいで描き上がっちゃう。自分でも「ドベタだな」と分かっていても、それ以上どう描いていいのか、手のつけようがない。1ヶ月、3ヶ月と我慢してだ描いてるうちに、1時間で描いていたのが1日になって、1日で描き上げていたのが、今度は3日掛かる様になって、最終的に1週間掛けないと1枚の石膏デッサンが描き上がらないようになって、毎日朝の10時から夕方の日が落ちるまで自然光の中で描いて、それだけの時間が掛かる。ってことは、何が変わったかというと、手先のテクニックが身についたんじゃなくて、最初より目がよく見えるようになった。つまり、トーシロートよりも目が見えるようになって、描かなくてはならない情報が増えたお陰でそれだけの日数が掛かる。目が肥えてくるというか、普通の人間が1時間で見切ってしまう容(かたち)を8時間の7倍見続ける力ができてくるわけだよね。芝居の稽古の場合でも、最初の頃の俺たちの稽古は、本番までに「ここをこうしよう、ここを工夫しよう」っていう工夫が浅かったと思うんだ。今、寺田が稽古の時間が少ないっていうのは、「確かに少ないよ。もっと稽古をやりたいよ」って思うのは、演るたんびに新しいことが見つかるわけじゃないか。「もっともっと」ってのが見えてきていると思うんだよね、全体にね。夜の樹の役者の集団の全体の感性みたいなものが上がっていると思うんだよね。見えてくるレベルが上がっていると思うんだけどね。自画自賛だけどサァ。ソレが稽古が少ないと感じる1番の原因だと思うけど。
寺田 俺はそうは思わないですけど、自分が演ろうと思うところまで全然到達していないからヤバイって感じ、そっちの焦りですよね。ここまで演ってないと、本番舞台に立てないぞってレベルまでまだきていないぞって感じですよね、その焦りですよね。
和田 ワ! まずい・・・。
寺田 2幕からはちょっとまずいなーと思うンですけど。このままじゃやばいなー、以外と自分たち息が合って、素直に演っちゃってるけど、お客の側から観ている我々に芝居が、「じゃーどうなのか?」ってことを考えると、まず、一番考えなくちゃならないのが2幕からかなって思うんですよ。そういう意味ではこんな稽古じゃ、ヤバイですよね。
和田 今日、本番10日前だっけ?
寺田 まぁーいつもこんな感じできちゃってるから、きっとこのまま本番に入るのかな。個々がきっと、もうそろそろ、自分の役割を分かって役作りするから、本番には間に合うとは思いますけど俺と和田さんと大谷の問題ですね!
和田 そうだね。(真顔で反省)
大谷 ハハハ、マジで?(席を立つ)
古口 大谷さんトイレ。
玉井 増子さん入ってるよ。
和田 (大谷に)逃げるなよ。
大谷 ハハハ。
寺田 ギリギリでも、あと1週間あるから、お互いが信頼してるから、きっと演るんでしょうけど。信頼があるからね。「あ、ヤバイ」って分かっていても、毎日稽古でも、お互いのアレを見つけるんでしょうね。その信頼感は長年演ってる者同士が感じるんだと思いますね。
大谷 そう思いますね、3人のところでも毎日続けてやれば、ナンとかなっちゃうのかぁ〜って楽観的に考えちゃうんですけど。
寺田 演っちゃうんだよ。
和田 俺も楽観的だよ。
寺田 お互いにね、どこかで信用しているんだよ。
和田 お互い、頼ってよっかかってたりして。
大谷 そう。ハハ。
寺田 ありがたい経験でね。
和田 たださ、今回初めてだけどさ、寺田と大谷と俺が3人とも同時に板の上にのるわけじゃないか。
寺田 初めてですね。
和田 初めてだからね、誰かが観客側にいたら見えるよ。「そこヤバイじゃないかこうしてくれ」って頼めるけど、3人乗っちゃうと見えないから、他の連中がそれをちゃんと観ていてくれないと。
大谷 だから古口くんに、
古口 トイレ行ってきます。
大谷 ナンだよ、トイレって!
一同 (笑)
和田 今回の座談会はこんなものか? もうチョット結論出したほうがいい?
大谷 イヤもうチョット話したほうが、
和田 いいよ。
大谷 その前に、トイレ。
玉井 トイレ1個だよ! 時間もいいところですしね。
増子 そろそろ帰らないと。
玉井 明日も稽古だし。
古口 スミマセン、俺も終電なんで帰ります。
            増子、古口帰宅。
和田 大谷帰ってきたら適当に締めてもらおう。
            大谷トイレより帰還。
大谷 今回の収穫は、古口くんが結構カチンときていたことが判ったということで。
香川 でも古口くんさー、芝居よくなりましたよね。ビックリするほどよくなって。
玉井 そう、すごくイイですよね、和田さんと寺田さんとの3人の場なんて。
和田 そう、あの場よくなったね。タダ真面目なだけの役者じゃなくて、夜の樹の、奇妙なユーモアーというか、それを承知の上で、演ってるという、柔らかさがでてきた。
香川 そうそう、そうなんですよ!
玉井 今回古口さんの芝居初めて観た人は、三枚目役者かなぁと思えると思いますよ。
和田 そうなんだよね。
大谷 そんなに誉めちゃ、天邪鬼になっちゃうよ。
和田 いないうちに褒めよう。
一同 (笑)
大谷 今回の稽古で俺、古口くんにずいぶんダメ出ししたんですけど、「あっムッとしてるなぁ」っていうのがすぐ分かるんですよ。
和田 顔に出るからね。
瀬畑 今年は稽古期間、いつもより長いよねぇ。でもすごい足りない気がする。それと、一杯やってるところと、やってないところの差がありすぎるんじゃない。
大谷 それは微妙にありますね。
和田 明日からは、必ず1回通せるからな。下手したら夜は通し稽古だけで終わりになっちゃうかもな。でも寺田間に合うって!
寺田 勿論ですよ! 間に合わなかったらヤバイじゃないですか! 
和田 その辺が我々ルーズだけど、逞しいところあるんだよな、ダメならダメなりに”クッー”って集中して、ちゃんとゴールには・・・、ハハハ、ゴールじゃない、通過点だ。通過点をある速度で、走り抜ける。アハハ。
寺田 「これでどうだ!」みたいに。
瀬畑 私、今年、体力的に持つかどうか心配。
和田 でも今年、俺は稽古が面白いね。楽しいね。
瀬畑 人の稽古を観ているのは楽しくて、自分で演るのはイヤでしょ? 私なんか、今自分がすごい稽古不足だと思っているのにも関わらず、やらないでホッとしていて、人の観てると楽しい。
和田 きれいごとで言うと、さっきの、前田が稽古で変わったときに、俺たちアレ立ち合ってよかったなっていうのが、自分の、役者としての自分に「プラスになったなぁ」っていうのが、ひとつの稽古に細かくあると思うんだよね。その日自分が稽古場で声出さなくても。
大谷 あのー、みんなは、自分が声出さなくても楽しいと思ってると思うンですけど、初めて参加の人はどうなのかなぁ〜ってのが、心配なんですよね。いつものメンバーは全然心配してないんですけど、むしろ当たり前なんですけど。
和田 しかし、テメーの稽古は逃れたいね、ナンとか明日に。
玉井 でも逃れると後でズンとくるから。
大谷 今日も俺、「和田さんと瀬畑さんのシーン稽古やりましょう」ってさんざん言ったんですけど、「いや、いい、大丈夫」って。
瀬畑 全然大丈夫じゃないよ!
一同 (笑)
玉井 あそこ逃れたいらしい! あたし2〜3回しか見たことない。
大谷 回数演ってないですからね。
玉井 実はすごく自宅で練習してるとか。
瀬畑 ないない!
和田 いや、俺やってるよ!
玉井 うそー! ひとりで?
大谷 今回、例年になく動きが多いから、和田さんのスケートのシーンとかもっとやりたいんですよね。
和田 また俺か! そうだね。
玉井 あそこ1番不安。
大谷 古口くんの演説と、和田さんのスケートの動きがぴしっと合ってないと。
和田 俺、自信ないから、亜子にきっかけ出して貰おうと思ってるんだけど。
玉井 エー?
和田 亜子につついて貰おうと思ってるんだけど。
玉井 じゃ、私がぎゅと握ったら・・・。
大谷 爪立ててね! やっぱり動きって、とても大切じゃないですか。
和田 大切だよ!
大谷 今回本当に動きが多いから、動きはやはり回数もある程度こなさないと。
和田 だから、明日から必ず通しだ!
瀬畑 机の上でやるところがみんな、場所的にできないから、薄くなってるよね。
玉井 稽古場の机もヤワで危ないから。
和田 危ないってところで、終わろう!
瀬畑 稽古場欲しい!

2003.11

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