吉行和子の紹介で「キャベツ畑」のナマ原を読んでもらい、渋谷のジァンジァンの前の喫茶店で初対面の氏に優しく励まされたのを覚えている。処女作を大御所に認められ、<成功の甘い香りの予感>に目が眩む心地の一晩だった。盟友・照明の日高氏を紹介してもらったのもその晩だった。(和田)
逆照射としての離人症 (1981年6月)「キャベツ畑の中の遠い私の声」パンフより
演劇というものは、一面人と人との“あいだ'”の感覚をとらえる表現形式ともいえます。
この人と人との“あいだ”の感覚がなくなる離人症は、それ自体の臨床学的な興味もさることながら、演劇を逆の方角から検証する、とらえなおすといった刺激的なモチーフともいえるわけです。
そういう演劇的な構造に興味をもつと同時に、やはりこの作者の<語りたい><語りつづけたい><語りつづけなければ>といったエネルギー、そして魂の火照りに圧倒されしました。吉行和子さんの紹介で和田さんと知り合い、生原稿でこの作品を読んだ時、深い感動をおぼえ、激しい嫉妬さえ感じました。
舞台化はそれなりに難しい問題をいくつかかかえていると思いますが、作者及び表現者をかねる和田さんの情熱がそれをひとつひとつ打破し、多弁でありながら、激しく燃えた無言が舞台を圧したらと期待しています。